脂質分解酵素リパーゼを皮脂汚れの洗浄に応用するための基礎的研究の一環として, 各種起源の異なるリパーゼを用いてリパーゼ活性に及ぼすpH及び界面活性剤の影響について系統的に検討した。pHの影響の結果からイオン性基の変化の度合いを検討し, リパーゼは2つのタイプに大別された。界面活性剤と基質を先に接触させるA法において, 界面活性剤の種類に関係なくすべてのリパーゼの活性は, 界面活性剤濃度の増加につれて減少した。一方, 界面活性剤とリパーゼを先に接触させるB法において, 非イオン界面活性剤はすべてのリパーゼ活性を増大させ最大値を与えたが, アニオン界面活性剤の場合には低濃度で完全阻害を受けるリパーゼと広い濃度範囲で, 活性の残存するリパーゼの2種のタイプに大別された。特に後者のリパーゼにおいて興味あることに, 活性は一たん増大したが, この説明としてリパーゼ-界面活性剤複合体の形成を考えた。pHの影響様式によるリパーゼの分類とアニオン界面活性剤による阻害様式に基づく分類とは一致した。
アニオン界面活性剤による強い阻害を防ぐ手段としての非イオン界面活性剤混合系についても検討を加えた。