油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
リノール酸メチルの自動酸化に伴うBHAの酸化的二量化と二量化に及ぼすリン脂質及びトリ-n-オクチルアミンの影響
藤谷 健
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1990 年 39 巻 6 号 p. 380-384

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抄録

リノール酸メチル (ML) の自動酸化に伴うBHAの酸化的分解と二量体の生成について検討した。また併せて, 酸化的二量化に及ぼすリン脂質及びトリ-n-オクチルアミン (TOA) の影響についても実験した。
BHAを溶かしたMLを暗所で60℃で空気酸化を行った。比表面積は16.9cm2/gとした。MLの酸化の程度は酸素吸収に基づく重量増加で測定し, MLの自動酸化安定性はその誘導期の長さで評価した。所定の時間酸化後, 反応混合物の一定量をとり, HPLCによってBHA単量体とその二量体を定量した。
自動酸化の初期には, BHA単量体の減少と二量体の増加がみられ, 次いで二量体も減少してゆき, 誘導期の終点では単量体と二量体のいずれもが消滅した。BHAの初濃度が高いときには, 二量体の生成量 (BHAの初濃度に対する比) が, 初濃度の低いときに比べて多かった。自動酸化過程ではジフェニルエーテル型二量体が優先的に生成し, その生成量はビフェニル型二量体の約10倍であった。
BHAとリン脂質の間の相乗作用を検討するため, ホスファチジルエタノールアミン (PE) またはホスファチジルコリン (PC) を種々の濃度で含むMLの自動酸化中のBHAの酸化的二量化を追跡した。PEを低い濃度で加えることによって, BHAを含むMLの安定性は著しく向上した。PCの効果はPEと実際上同程度であった。リン脂質の添加によって, BHAの分解速度は遅くなり, 生成する二量体の量は減少した。
TOAとBHAの間の相乗作用は非常に強く, BHAの酸化的二量化に及ぼすTOAの影響は特異的であった.自動酸化の最初の5d間に, 消失したBHA単量体に相当する量のビフェニル型二量体が生成し, 以後のBHA単量体と二量体の組成の変化はわずかであった。

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