抄録
置換基 (X) を有するo-及びp-ニトロフェノール類の水溶液中での酸性度と1H NMRスペクトルに対するα-及びβ-シクロデキストリン (CyD) の添加効果について検討した。CyDはニトロフェノール類のみかけの酸性度に特徴ある影響を及ぼすことがわかった。つまり, ΔpKa [pKa (水中) -pKa (CyD) (CyD存在下)] はα-CyDまたはβ-CyDとo-X-p-ニトロフェノール類との組み合わせ, β-CyDとp-X-o-ニトロフェノール類との組み合わせ (ただし, X=H, Me, OMeを除く) では正値を示すが, β-CyDとo-X-o-ニトロフェノール類との組み合わせでは負値を示した。しかし, α-CyDについてはp-またはo-X-o-ニトロフェノール類のpKaに及ぼす影響は極くわずかであった。このようなΔpKaの大きさは, 主に置換基 (X) の大きさ, 極性, 電子的性質, 及びCyDの空洞の大きさに依存することがわかった。これらの結果については, ニトロフェノール (またはニトロフェノラート) とCyDの空洞との適合性をもとに解釈した。さらに, 包接体中のニトロフェノラート類の1H NMRスペクトルの変化から, CyD空洞中の基質の配置について考察した。