抄録
近年著しい発症の増加が懸念されている日本の虚血性心疾患の発症も諸外国からみれば, まだまだ少ないというのが現状である。
この諸外国に比べて日本に心臓病の少ないことの理由には, 様々な解答が考えられているが, この説明に脂質栄養学の進歩が密接にかかわっている。
脂質栄養学の進歩により, 各種脂肪酸の血清脂質, リポタンパクに及ぼす影響がわかってきて, 飽和脂肪酸がコレステロールを上昇させること, また多価不飽和脂肪酸のなかでもn6系はコレステロール低下作用があることなどが判明している。しかし, 多価不飽和脂肪酸には血清脂質低下作用は認められるものの不飽和脂肪酸であるために酸化を受けやすい。
今後はリポタンパクの量に加えて, リポタンパクの質に対する影響を充分に考える必要がある。
こうした脂質栄養学における成果は, 日本における動脈硬化性疾患の発症を抑制していることを良く説明している。
しかし, この分野における問題は数多く, 古典的な吸収から始まって, 遺伝素因との関係など, 今後検討すべき課題は多い。