日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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リゾリン脂質による皮膚のヒアルロン酸産生促進効果 (第1報)
培養真皮線維芽細胞のヒアルロン酸産生に対するリゾホスファチジルコリンの影響
田中 信治橋爪 論土井 浩山本 昇
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1997 年 46 巻 9 号 p. 969-975,1028

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抄録
リゾホスファチジルコリン (LPC) は比較的ありふれたリン脂質ではあるが, 平滑筋細胞の収縮や血管内皮細胞からの増殖因子の分泌こう (亢) 進およびT細胞の遊走性亢進など様々な生理作用を有していることが近年明らかになりつつある。本研究において, 0.5%血清濃度において正常ヒト皮膚線維芽細胞を単層培養したとき, ヒアルロン酸を主な成分とするグリコサミノグリカン (GAG) の産生が大豆由来のリゾリン脂質の添加により顕著に亢進されることを明らかにした。
あらかじめこのリゾリン脂質をホスホリパーゼBで前処理したところ, GAGの産生亢進作用は失われ, グリセロール, グリセロリン酸やグリセロホスホリルコリンあるいは種々の遊離脂肪酸のいずれにも産生亢進効果は認められなかった。さらに卵黄や牛肝臓由来のLPCも産生を亢進せず, 大豆LPCのみが亢進作用を示した。次にLPCの脂肪酸の影響について検討したところラウリン酸, ミリストオレイン酸やα-リノレン酸など特定の脂肪酸残基を有するLPCがGAG産生を顕著に亢進した。大豆由来のLPCに含有される各種脂肪酸分子種は単独では促進効果を示さなかったが, これらを大豆LPCの脂肪酸組成と同様のモル比で混合したところGAG産生が亢進した。
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