抄録
イオン性界面活性剤のミセル形成に及ぼす反対イオンの効果に関して, 最近我々が行った研究 : i) パーフルオロカルボン酸を反対イオンに持つ陽イオン性活性剤の水中における溶解度とミセル化の研究, ii) 鎖長の異なるアルキル硫酸を反対イオンにもつドデシルアンモニウム塩のミセル形成について, 反対イオンの炭素数の違いと温度の効果の両面からみた研究, iii) 性質の異なる反対イオンを混合したドデシルアンモニウム塩の二成分混合系 : (A) パーフルオロカルボン酸対アルキルスルホン酸, 及び (B) パーフルオロ酢酸対パーフルオロプロピオン酸の組合せの “混合ミセル形成” に関する研究, 及びiv) 種々のタイプの反対イオンを持つα, ω-型両親媒性物質のうちで, その反対イオンが, (A) 種々のアルキル鎖長を持つα, ω-アルキルジアンモニウムビス (ドデシル硫酸), 及び (B) α, ω-型界面活性剤イオンと同じタイプの反対イオンとからなる種々の界面活性剤のミセル形成において, 活性剤イオン及び反対イオンの両方について, 解離基間 (電荷間) 距離の大小の組合せがミセルの性質に対する効果を系統的に調べた研究, を紹介する。
さらに, 臨界ミセル濃度 (CMC), 反対イオン結合度 (β) 又はミセルの解離度 (α) を電気伝導度で求める方法について, α-スルフォナトミリスチン酸メチル (又はエチル) エステル塩の各温度下の水溶液に関する研究を例にあげて検討する。
なお, 本綜説の序節においてイオン性界面活性剤のミセル形成に関する理論上の概要を述べている。