1999 年 48 巻 11 号 p. 1233-1245,1319
本総説は1999年度日本油化学会学会賞受賞論文に基づいたものである。先ず, ドコサヘキサエン酸 (DHA) やエイコサペンタエン酸 (EPA) のような機能性高度不飽和脂肪酸 (PUFA) を構成脂肪酸とするトリアシルグリセリン (PUFA-TG) やリン脂質 (PUFA-PL) の新規調製法について紹介している。
すなわち, 生理学的に利点のある90%PUFA含有率のPUFA-TGがRhizomucor miehei起源の固定化リパーゼと酵素活性発現に必須の水の代替物としてエチレングリコールまたはプロピレングリコールを用いて, 60℃, 7.5hの条件下にマグロ眼窩油とPUFAの3回繰り返しアシル基変換反応により調製できた。
また, 38%PUFA含有率のPUFA-PLはCandida cylindracea起源の微生物リパーゼを用いて, 大豆リン脂質とPUFA-モノアシルグリセリン (PUFA-MG) の4回繰り返しアシル基変換反応により回収率83%で調製できた。
ここで, PUFA-MGは酵素活性に必須である水の代替物であると同時に高度不飽和アシル基供与剤として用いることができた。
次に, PUFA-TGの自動酸化に対するアミノ化合物の酸化防止および酸化防止相乗効果について概説している。すなわち, 試験した含窒素リン脂質, 数種のアルキルアミン, スペルミンのようなアミノ化合物はトコフェロール混合物と比較して, 僅かしか酸化防止活性を示さなかった。しかしながら, 非水系および乳化系におけるPUFA-TGの自動酸化において, 第1級アミノ基はトコフェロールに対して顕著な相乗効果を発揮することを見出した。これより, アミノ化合物の第1級アミノ水素は優れた水素ラジカル供与剤として機能し, トコフェロールが再生されると考えられた。