日本油化学会誌
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P-クレゾールの酸化カップリング反応における自動的反応阻害要因とその除去
朝倉 浩一中田 芳昭小山内 州一
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1999 年 48 巻 2 号 p. 117-121,149

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抄録
塩化第二鉄水溶液にp-クレゾール (1) を加えると, 酸化カップリング反応により1が直接結合したオリゴマーが得られる。この酸化カップリング反応においては, 塩化水素と塩化第一鉄が反応進行とともに生成してくる。これら2つの化合物の協同効果はこの酸化反応を顕著に抑制し, この反応は自動阻害系であることが見出された。塩化水素は1及びそのオリゴマーのFe3+への配位を阻害し, 塩化第一鉄は1及びそのオリゴマーと錯体を形成することにより, 競争阻害剤として機能するものと考えられた。アンモニア, エチレンジアミン, ピリジンを用いて, これら自動阻害因子の除去を試みた。これらが塩化水素とアンモニウム塩を形成し, これを除去する効果は明らかには同定されなかったが, 金属イオンとの相互作用については, 実験結果よりその効果が説明付けられた。HSAB則で硬い塩基に分類されるアンモニアとエチレンジアミンは, 酸化反応を阻害した。これら化合物は, HSAB則で硬い金属イオンに分類され酸化剤として機能するFe3+へ強く配位し, 酸化を阻害したものと考えられた。一方, 中間の塩基に分類されるピリジンは, 中間の金属イオンに分類され, 競争阻害因子として機能するFe2+と安定な錯体を形成し, 変換率を向上させた。
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