日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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各種胆汁酸から合成したカチオン活性剤のミセル形成に関する熱力学的研究
荒木 洋一柳田 知倫久冨 美保子清田 泰良李 相男杉原 剛介
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1999 年 48 巻 4 号 p. 307-316,363

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抄録

アニオン性界面活性剤の一種である胆汁酸の表面活性やミセル形成などの物性はよく調べられているが, 胆汁酸の親水基として働く解離基の, 相違に対する依存性について系統的な研究はまだなされていない。そこで, 新しいカチオン性胆汁酸誘導体のシリーズ (CBADs);エチレンジアミンモノコラミド塩酸塩 (EdaC), エチレンジアミンモノデオキシコラミド塩酸塩 (EdaDC), エチレンジアミンノノケノデオキシコラミド塩酸塩 (EdaCDC) 及びエチレンジアミンモノウルソデオキシコラミド塩酸塩 (EdaUDC) を合成した。これらの胆汁酸誘導体について, 水溶液中の臨界ミセル濃度 (CMC) や反対イオン結合度 (β) などは, 表面張力測定法 (滴容法) を用いて, 10℃から50℃までの温度範囲内で10℃刻みに測定を行ない, 決定した。これら合成したカチオン性界面活性剤は, 天然の胆汁酸のナトリウム塩と比較して生体膜攪乱 (perturbation) 能が高く, 膜透過性も高いが, CMC, β及び表面活性などは, EdaCを除いて天然の胆汁酸と類似していることが分かった。
さらに, 詳細な熱力学的解析を行ない, エントロピーとエンタルピーとの間には, 補償効果が成り立ち, 補償温度がいずれも約300Kの値を示すことなどを報告する。

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