抄録
能率のよい界面活性剤は, 疎水性が強く (=水への単分散飽和溶解度が小さく), なおかつ疎油性が強い (=油への単分散飽和溶解度が小さい) 界面活性剤である。その疎水性には親油基鎖長が, また疎油性には親水基の長さと構造が大きく寄与している。疎油性, 即ち, 水共存下での両親媒性物質の炭化水素への単分散飽和濃度は, 両親媒性物質の重要な特性の1つである。その測定方法は, 界面活性剤の溶存状態により異なり, 特に単分散飽和濃度の小さい (疎油性が大きい) 界面活性剤については液を濃縮して測定するなどの工夫が必要である。
ここでは, 水酸基を有する両親媒性物質のもつ特徴的な物性を, オキシエチレン型非イオン界面活性剤の性質と対比した。オキシエチレン型非イオン界面活性剤の疎油性は, オキシエチレン基1つ増すごとに約2.5分の1増大する。一方, -CH (OH) -基は, オキシエチレン基4.6個分相当の疎油性を有した。また, 親水部の-O- (エーテル) が, -COO- (エステル) になることで疎油性は5倍増大した。疎油性が同程度の, ヘキサオキシエチレンモノドデシルエーテルと, モノグリセリルα-モノドデシルエーテルでは, 前者が水溶性であるのに対し, 後者は, 油溶性である。水酸基が, 親水基としても疎油基としても強力なうえにコンパクトであることが, 疎油性が強くかつ油溶性であるという性質につながっている。これらポリオール型界面活性剤は, 芳香族炭化水素を含む系や油中での使用に効果を発揮するものと考えられ, 糖脂質やポリグリセリル型の界面活性剤は, その疎油性の強さと温度の影響を受けにくい点において, 実用面への応用の可能性が非常に大きいことが示唆される。