労働安全衛生研究
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原著論文
性周期の時期別にみた 尿中 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine 量の比較
吉田 吏江小川 康恭松本 由紀毛利 一平
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2008 年 1 巻 3 号 p. 205-209

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抄録

女性の健康状態を研究する際には女性ホルモンの分泌状態を変数として加えることが重要であるといわれている.発がんを考えた場合も女性ホルモンには促進作用があるのでその影響を考慮する必要がある.体内酸化的ストレスマーカー尿中8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OH-dG)は発がんリスクの指標としてよく使われているが,先行研究においては女性の性周期を変数として扱った研究はまだない.そこで,尿中8-OH-dG量の増減には女性ホルモン量が関係しているか否かを研究することは,女性において増加しているがんの予防対策にとって重要であるばかりではなく産業現場における女性の発がん要因曝露によるがん罹患を予防するためにも重要な課題と考えられる.本研究では,女性において性周期の時期毎に尿中8-OH-dG量の平均値を算出し,その値に変化があるか否かを検討した.対象は某会社事務職員205人で,定期健康診断日の朝,事前配布の質問票を回収すると共に聞き取りを行い基本情報を得,尿試料を入手した.その後,尿中8-OH-dG,エストロジェン(E2),コチニン,クレアチニンを測定した.解析対象は,女性で,性周期の情報があり,喫煙経験がなく,ホルモン作用のある薬を服用中でない者93人(平均年齢34.4 歳,22~56歳)であった.体内E2濃度が高い黄体期と低い月経期においては尿中E2量も同様の関係を示したが,尿中8-OH-dG量を比べたところ,黄体期では4.1 ± 0.6 μg/g creatinine,月経期では3.0 ± 0.4 μg/g creatinineであり,統計学的には有意でなかったが黄体期で酸化的ストレスレベルが高いことが疑われた.

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© 2008 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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