2017 年 10 巻 2 号 p. 75-83
本研究では,運転暴露に加えて,運転が困難な状況における運転頻度及び運転回避頻度の違いに着目したうえで,性差を検討すること,および高齢期における運転頻度と運転回避頻度の関係について明らかにするために,69歳から86歳までの高齢者講習受講者226名を対象に質問紙調査を実施した.その結果,運転頻度に性差は示されなかったが,運転距離には性差が示された.また,運転が困難な状況に関して,運転回避頻度に性差はないが運転頻度のみ性差が認められる状況が多かった.したがって,運転回避頻度と運転頻度という指標によって性差が生じる状況が異なることが示された.運転暴露指標を統制したうえで,特定の状況における運転頻度と運転回避頻度の関連を検討した結果,男性では全状況において弱い有意な相関関係が示された.一方,女性では限られた状況においてのみ中程度の有意な相関関係が示された.以上を踏まえると,高齢期における運転頻度に性差は無いが,運転距離及び運転が困難な状況での運転頻度には性差があることが明らかとなった.しかしながら,運転頻度の減少は運転回避頻度の増大と同義ではなく,意図的な回避だけでない他の心理・社会的要因によって運転頻度の減少が生じる可能性が指摘された.