労働安全衛生研究
Online ISSN : 1883-678X
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10 巻 , 2 号
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巻頭言
特集「人間からアプローチする労働安全衛生」
原著論文
  • 太子 のぞみ, 臼井 伸之介
    2017 年 10 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2017/09/29
    公開日: 2017/09/29
    [早期公開] 公開日: 2017/08/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,運転暴露に加えて,運転が困難な状況における運転頻度及び運転回避頻度の違いに着目したうえで,性差を検討すること,および高齢期における運転頻度と運転回避頻度の関係について明らかにするために,69歳から86歳までの高齢者講習受講者226名を対象に質問紙調査を実施した.その結果,運転頻度に性差は示されなかったが,運転距離には性差が示された.また,運転が困難な状況に関して,運転回避頻度に性差はないが運転頻度のみ性差が認められる状況が多かった.したがって,運転回避頻度と運転頻度という指標によって性差が生じる状況が異なることが示された.運転暴露指標を統制したうえで,特定の状況における運転頻度と運転回避頻度の関連を検討した結果,男性では全状況において弱い有意な相関関係が示された.一方,女性では限られた状況においてのみ中程度の有意な相関関係が示された.以上を踏まえると,高齢期における運転頻度に性差は無いが,運転距離及び運転が困難な状況での運転頻度には性差があることが明らかとなった.しかしながら,運転頻度の減少は運転回避頻度の増大と同義ではなく,意図的な回避だけでない他の心理・社会的要因によって運転頻度の減少が生じる可能性が指摘された.

  • 齋藤 剛, 池田 博康, 岡部 康平, 岩切 一幸
    2017 年 10 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2017/09/29
    公開日: 2017/09/29
    [早期公開] 公開日: 2017/09/14
    ジャーナル フリー

    高齢者介護施設での腰痛発症件数の増加が問題とされており,予防対策の一つとして,介助機器・福祉用具の積極的な活用が推奨されている.特に,入浴介助は,脱衣場–浴室–浴槽間での移動や移乗など,介護者の身体的負担が大きい作業が多く,特殊浴槽やバスリフトなど動力を用いる入浴介助機器が利用される.ただし,これらの入浴介助機器について,作業負荷軽減といった有用性に関しては確認されているが,機器を操作する介護者の安全については十分に検討されておらず,実際に,設計段階でのリスク低減が不十分な機器も少なくない.このような状態で入浴介助機器の普及が推進されれば,はさまれ・巻き込まれなど機械災害の多発に至る可能性がある.本研究では,これまで製造ラインや工作機械で培われてきた産業機械の安全技術を応用するアプローチで,動力を用いる入浴介助機器の工学的保護方策を検討してきた.このうち,本論文では,市販の入浴用ストレッチャ式電動リフトを対象に考案した介護者のはさまれ災害に対する方策について述べる.考案した方策を試作し,入浴用ストレッチャ式電動リフトに実装して,基礎的動作試験から所要の特性が実現されていることを確認した.さらに,考案した方策が入浴用ストレッチャ式電動リフト本来の使用性や介護者の作業条件に影響を及ぼさないことを,業務で同種の機器を扱っている介護施設職員らの参加を得て行った使用性評価試験によって確認した.

  • 髙安 洋, 島崎 敢, 石田 敏郎
    2017 年 10 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2017/09/29
    公開日: 2017/09/29
    [早期公開] 公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー

    鉄道が相互乗り入れを行うことで発生すると考えられる,従事員同士のコミュニケーションエラーについて,鉄道会社に勤務する従事員にアンケートを実施し,各鉄道会社へ運転用語の調査や,シミュレーション実験を通じて,実際のエラー発生の傾向などを分析した.この結果,意味は同じでありながら,独自の鉄道用語が存在することが認められた.また,シミュレーション実験では,多くの鉄道会社で用いられている確認方法である「復唱」と「確認会話」を用いて,お互いの理解度の違いを検証したところ,「確認会話」を用いた場合は,「復唱」と比較して正答率が向上していたことから,「確認会話」が相互間の理解促進に一定の効果があることが認められた.

調査報告
資料
  • 中村 史江, 佐藤 栄子, 青山 みどり, 山門 實
    2017 年 10 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 2017/09/29
    公開日: 2017/09/29
    [早期公開] 公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    看護師の勤務環境改善について日本看護協会は2010年「病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査」を実施し,勤務時間が長い方がより勤務後半部でヒヤリ・ハットを起こす可能性が高いことを明らかにした.これに基づき2013年「勤務拘束時間13時間以内」体制とする「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」を作成した.しかし,2014年の2交代制病院の実態調査による「勤務拘束時間13時間以内」体制の実施は19.8%であり容易に着手できない状況がうかがえている.そこで,看護師の「勤務拘束時間13時間以内」体制の導入に効果が得られた文献から,その促進要因を明らかにすることを目的とし,レヴィンの変革理論の3段階である解凍期・移行期・凍結期を基に分析をした.その結果,まず解凍期では,導入の「契機」から管理者が適切なビジョンを掲げリーダーシップを発揮して「推進体制づくり」を発足し「現状分析」を行っていた.次に移行期では,「推進に向けた取り組み」により実践可能な「具体的対策」を立案し実施していた.最後の凍結期では,取り組みを継続しさらに変革を進めて維持する「導入後の評価と改善」を繰り返し行っていた.また,どの時期においても変革を促進する力と抑制しようとする力のバランスを保つため,現状の不満や不安・怒りを抑える場を作り意見交換をして情報共有を図り,組織構成員の理解と承認を得ることにより変化を起こすための組織力を高めていた.

技術解説
技術解説
  • 豊田 寿夫
    2017 年 10 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2017/09/29
    公開日: 2017/09/29
    [早期公開] 公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー

    現在開発の最終段階にあるOH&Sマネジメントシステムの国際規格ISO 45001は“ISOの附属書SL”の枠組みで作られている.この関連で“リスク及び機会”という概念が持ち込まれ,新規格には二つのリスクとそれぞれに対応する機会,合計4種類のリスク関連要素が使われている.本稿では,この中の労働安全衛生法の規定に関わる(OH&S)リスクに関するリスクアセスメントを中心に報告する.規格自体は特定のリスクレベルについては言及せず,運用国の法体系に準拠すべきとの規定である.したがって,我が国での新規格の運用は労働安全衛生法第28条の2及び第57条の3の規定に準拠し,受容可能なリスクレベルはこれらの規定に対して発行された二つの指針の施行通達が求めるALARPということになる.なお,OH&Sマネジメントシステムの運用に必要となるリスクアセスメントではISO/JIS Q 31010のリスク領域とリスクの区分に則り,厚生労働省の要綱を踏まえ,関連法規制の順守をもってALARP達成との解釈を行う手順を提案する.本事項を含む新規格の活用上の問題点は,我が国でのISO 45001の運用開始までに解消されることを期待したい.

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