労働安全衛生研究
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原著論文
介護者のはさまれ災害に対する入浴介助機器の保護方策の開発—入浴用ストレッチャ式電動リフトへの適用と評価—
齋藤 剛 池田 博康岡部 康平岩切 一幸
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2017 年 10 巻 2 号 p. 85-95

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抄録

高齢者介護施設での腰痛発症件数の増加が問題とされており,予防対策の一つとして,介助機器・福祉用具の積極的な活用が推奨されている.特に,入浴介助は,脱衣場–浴室–浴槽間での移動や移乗など,介護者の身体的負担が大きい作業が多く,特殊浴槽やバスリフトなど動力を用いる入浴介助機器が利用される.ただし,これらの入浴介助機器について,作業負荷軽減といった有用性に関しては確認されているが,機器を操作する介護者の安全については十分に検討されておらず,実際に,設計段階でのリスク低減が不十分な機器も少なくない.このような状態で入浴介助機器の普及が推進されれば,はさまれ・巻き込まれなど機械災害の多発に至る可能性がある.本研究では,これまで製造ラインや工作機械で培われてきた産業機械の安全技術を応用するアプローチで,動力を用いる入浴介助機器の工学的保護方策を検討してきた.このうち,本論文では,市販の入浴用ストレッチャ式電動リフトを対象に考案した介護者のはさまれ災害に対する方策について述べる.考案した方策を試作し,入浴用ストレッチャ式電動リフトに実装して,基礎的動作試験から所要の特性が実現されていることを確認した.さらに,考案した方策が入浴用ストレッチャ式電動リフト本来の使用性や介護者の作業条件に影響を及ぼさないことを,業務で同種の機器を扱っている介護施設職員らの参加を得て行った使用性評価試験によって確認した.

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© 2017 独立行政法人労働安全衛生総合研究所
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