労働安全衛生研究
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調査報告
大工職の建設作業者におけるリスクテイキング行動と安全行動の促進要因に関する予備的検討
高橋 明子 三品 誠
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2023 年 16 巻 1 号 p. 71-82

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抄録

建設現場では労働災害防止のための様々な工学的対策や管理的対策が実施されているが,作業者がリスクを承知で不安全な行動をとるリスクテイキング行動に対してはこれらの対策で十分に防ぐことができない.そのため,作業者のリスクテイキング行動の促進要因と安全行動の促進要因を定量的に調べ,これらを基に有効な安全対策を検討する必要がある.本研究は定量的な検討のための予備調査として,ベテランの建設作業者18名を対象に,脚立作業のリスクテイキング行動についてインタビュー調査を行い,リスクテイキング行動と安全行動の促進要因を抽出した.その結果,リスクテイキング行動の促進要因は,ベテラン作業者,初心者ともに,4カテゴリー(【作業者の内的要因】,【経験的要因】,【状況的要因】,【他者の影響】)が抽出されたが,初心者のほうがベテラン作業者よりも多くのサブカテゴリーが認められた(初心者:14サブカテゴリー,ベテラン作業者:9サブカテゴリー).一方,安全行動の促進要因は,作業経験別の特徴はあまり見られず,作業者の内的要因を中心とした7カテゴリー(【安全・作業に関する知識・スキル】,【自己の能力・立場に関する自覚】,【ケガ・事故の影響の認識】,【作業(方法・場所)に関する認識】,【作業への主体的な関わり】,【経験・具体的行動】,【他者からの支援・影響】)が抽出された.今後はこれらの知見を基に,作業者の安全行動に着目した認知行動モデルを定量的に検討し,有効な安全対策の提案を目指す.

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© 2023 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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