労働安全衛生研究
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調査報告
アルミ鋳造品製造工程における作業者の手腕振動ばく露の実態
柴田 延幸 永田 智久塩田 直樹
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2012 年 5 巻 2 号 p. 79-86

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抄録

アルミ鋳造品製造における手腕振動ばく露を伴う四つの作業工程について,六種類の手持ち振動工具を通常使用した際の作業者の手腕振動ばく露量の測定を行った.また,普段の手持ち振動工具の一日当たりの使用時間や作業後の自覚症状の有無および手腕振動ばく露軽減のために自身が行っている対策について聞き取り調査を行った.その結果,鋳造品の仕上げ工程および最終検査工程における研磨作業では,日当たり等価振動ばく露量に基づいた一日当たりの振動ばく露限界時間が1時間強或いは1時間未満であった.これらの手腕振動ばく露作業は,通常一日当たり5時間程度行われており,当該振動ばく露作業業務改善の必要性が明らかになった.同作業工程の手腕振動ばく露作業者は特殊健康診断(いわゆる振動健診)を受けておらず,金型製造の仕上げ工程の作業者のみが振動健診を受診していた.聞き取り調査の結果,慢性的な自覚症状を訴える作業者はいなかったが,大半の作業者が所定の手腕振動ばく露作業中あるいは終了後の手指の疲労や痺れを訴えた.しかしながら,防振手袋の使用は見受けられなかった.手腕振動ばく露作業者の大半は,軍手と薄手のゴム手袋を重ねて装着するか防振性能を有していない革製手袋を装着していた.今回の調査の結果,当該現場において防振手袋等の保護具普及の啓蒙活動をはじめとする総合的な手腕振動ばく露低減のための作業管理の必要性が明らかとなった.本調査で測定対象とした振動工具は、鋳造品製造で一般的に用いられている工具である.今後、同様の工具に対する広範な手腕振動ばく露量の測定と作業管理方法に関する実態調査を進める必要がある.

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© 2012 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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