労働安全衛生研究
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5 巻, 2 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 玉手 聡, 堀 智仁, 三國 智温, 山本 希
    2012 年 5 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    土砂災害による死因は窒息と圧迫が多く,これらは埋没した際に胸部を圧迫されたことが原因となっている.本研究では,土砂の圧迫から胸部を守る器具に必要な強度の解明を目的に,実験的な検討を行った.この実験では,崩土の圧力を計測するために胸部の模型を作製し,これを実際の崩壊土砂に埋没させた.その結果,土砂圧力は初めに落下による衝撃が作用し,続いて堆積による圧力へと推移することがわかった.正面の堆積圧力は埋没向きによらずほぼ鉛直圧力相当が上限となることを明らかにし,埋没深さが1m以下では衝撃圧力が必要強度の支配要件となることがわかった.次いで,人間工学的な検討から生存限界の作用圧力と限界たわみ度の関係を推定し,胸部の圧縮形数kaを求めた.さらに,安全帯の構造規格に定められた静的荷重と動的荷重の関係を援用して,衝撃圧力の上限値PDを推定した.圧縮形数kbの保護具を装着した胸部を並列バネでモデル化し,PDが作用した時に傷害レベルを軽傷以下とするために必要な保護具の圧縮係数と強度を導いた.以上のとおり,本研究では小規模崩壊をターゲットに,労働者が土砂に埋没しても命を守るために必要な胸部保護具の性能の考え方を提案し,実験的解析と人間工学的検討に基づいた試算の結果を示している.
  • 岡部 康平
    2012 年 5 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    安全防護物の無効化に起因する労働災害を防止するための安全設計要件を考察する.産業機械での災害事例から無効化の事由を,保守管理の実施,生産性への対応,作業性への対応の3種類に区分して示す.区分の指標に労力節約の観点を採用し,区分に応じて機械設備にて対処すべき課題が異なることを示す.そして,無効化の事由より安全設計の現状の課題を考察し,安全設計で配慮すべき要件を明らかにする.さらに,設計のための手法として,制約呈示法と誘導教示法を呈示し,システム制御への適用例を示す.
調査報告
  • 大西 明宏, 清水 尚憲
    2012 年 5 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    ロールボックスパレット(RBP)は作業の効率化や荷物の損傷防止に貢献する荷役機材である.一方でRBP取扱い作業による手足の負傷が一部の運輸業で頻発していることが報告されているが,不休災害の場合は届出の義務がないため軽微な災害の実態把握に限界がある.しかし軽微な災害全般が把握できると潜在する約10倍のヒヤリ・ハットの見積が可能となることから,RBP取り使い作業における危険要因を包括的に評価する意味において比較的軽微な災害例を検討することは意義深いと言える.そこで本研究は軽微な災害として休業4日未満の4都県における死傷病報告データを用いてRBP起因災害の実態と特徴,未然防止策を検討した.その結果,運輸業が半数以上を占めたが他の業種も約半数に上ること,打撲が半数以上であること等が確認された.またRBP起因災害は4つに類型され,これに85%が該当することがわかった.これら災害防止には手・足部のプロテクターや足指保護の安全靴が有効と考えられるが,その他にも認知度が低いRBPの名称が正しく死傷病報告へ反映される方策,基本的な使用方法を網羅したマニュアル等の整備によるRBP起因災害に特化した教育の充実が求められる.またRBP自体に負傷リスクがあることから,安全な構造への見直しも重要な課題である.
  • 柴田 延幸, 永田 智久, 塩田 直樹
    2012 年 5 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    アルミ鋳造品製造における手腕振動ばく露を伴う四つの作業工程について,六種類の手持ち振動工具を通常使用した際の作業者の手腕振動ばく露量の測定を行った.また,普段の手持ち振動工具の一日当たりの使用時間や作業後の自覚症状の有無および手腕振動ばく露軽減のために自身が行っている対策について聞き取り調査を行った.その結果,鋳造品の仕上げ工程および最終検査工程における研磨作業では,日当たり等価振動ばく露量に基づいた一日当たりの振動ばく露限界時間が1時間強或いは1時間未満であった.これらの手腕振動ばく露作業は,通常一日当たり5時間程度行われており,当該振動ばく露作業業務改善の必要性が明らかになった.同作業工程の手腕振動ばく露作業者は特殊健康診断(いわゆる振動健診)を受けておらず,金型製造の仕上げ工程の作業者のみが振動健診を受診していた.聞き取り調査の結果,慢性的な自覚症状を訴える作業者はいなかったが,大半の作業者が所定の手腕振動ばく露作業中あるいは終了後の手指の疲労や痺れを訴えた.しかしながら,防振手袋の使用は見受けられなかった.手腕振動ばく露作業者の大半は,軍手と薄手のゴム手袋を重ねて装着するか防振性能を有していない革製手袋を装着していた.今回の調査の結果,当該現場において防振手袋等の保護具普及の啓蒙活動をはじめとする総合的な手腕振動ばく露低減のための作業管理の必要性が明らかとなった.本調査で測定対象とした振動工具は、鋳造品製造で一般的に用いられている工具である.今後、同様の工具に対する広範な手腕振動ばく露量の測定と作業管理方法に関する実態調査を進める必要がある.
  • —労働損失日数の活用によるリスクの定量的評価と比較—
    濱島 京子, 梅崎 重夫, 板垣 晴彦
    2012 年 5 巻 2 号 p. 87-97
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    粉砕機及び混合機による労働災害は年間あたり死亡災害が約10件,休業4日以上災害で約250件発生しているが,業種や機種,作業においてどの程度重篤な災害が発生しているのか,その実態は明らかにされていない.そこで,「労働損失日数の活用によるリスクの定量的評価手法」を用いて,これらの項目に対する全労働損失日数を算定しリスクの定量化を試みた.分析の結果,混合機・粉砕機全体での全労働損失日数は131.6×103日/年であった.ただし,この中には本来,食品加工用機械を起因物とすべき災害が19.5×103日/年含まれている.業種別では,清掃・と畜業,化学工業,食料品製造業,窯業土石製品製造業の順にリスクが高く,これら4業種にて全労働損失日数の約68%を占めていた.機種別では,破砕機・クラッシャー,攪拌機・混合機,粉砕機,食品加工用機械,混練機(ニーダー等)の順にリスクが高く,全体の約80%を占めていた.可動部別では,羽根・翼,刃,棒・軸(シャフト,ローター含)にて全体の約39%を占めていたが,これまで可動部として考慮されることの少なかったゲートや蓋などの開閉部のリスクが,これらに次いで高いことが明らかとなった.作業別では,清掃が最もリスクが高く,次いで保守・点検・修理,原料投入,運転・製造,詰まり除去の順であり,これらの作業にて全体の75%を占めていた.
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