抄録
本研究は、事業化段階での決定手続きに位置づけられるドイツの計画確定手続きに着目し、ベルリンでの道路事業を1つの事例として、事業化段階での住民からの異議や要望と、それに対する結論の出し方を分析した。分析にあたっては、当事例の地域的特色や住民反対運動を含めた事業経緯をふまえつつ、住民から異議や要望として出された事業の必要性、路線選定や土地利用、周辺地域への影響として大気汚染、騒音、景域保護、居住環境など、また用地取得や手続き全般などの異議の幾つかを具体的に取り上げた。結論としては、必要性や路線選定や土地利用などは、変更することなくこれまでの事業経緯を説明し、周辺地域などは、基本的には詳細な法制度に基づき判断しているが、法制度にはないものの便宜を図るなどの工夫をしていることもある。この制度を念頭に置きつつ日本において事業化段階で、異議や要望の内容、それに対する判断の仕方や、結論をまとめて公表する仕組みの必要性を論じた。