抄録
仕事に向かう人,お気に入りのCDショップに向かう人,恋人と手をつないで歩く人. 遅刻しそうな時,初めての場所を訪れた時,疲れている時.歩く速さはそれぞれ異なるはずだ.街には様々な人が織り成す様々な速度が溢れている.そしてそれらの速度が集まることでその場所の速度―空間速度―が生まれる.従来の都市においては空間速度の違いを考慮した空間設計はあまり為されてこなかった.また,近年の複雑・高速化し続ける交通体系において,基本交通手段である歩行の挙動解明の重要さが見直されている.そこで本研究では,GPS搭載の携帯電話を用いたプローブパーソン技術により歩行者の行動文脈の流れに沿ってデータを蓄積する,従来の歩行者研究とは異なる手法を用いて, 個人間・個人内の歩行速度を分析し,空間速度を明らかにすることにより,空間速度を考慮した空間デザインの一手法を提案する.