都市計画論文集
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特定街区制度を活用した容積移転による歴史的環境保全の効果に関する研究
東京都心部を対象としたヘドニック法による外部効果の推計を中心に
保利 真吾片山 健介大西 隆
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2008 年 43.3 巻 p. 235-240

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抄録
本研究は、東京都における容積移転による歴史的環境保全事例が周辺に及ぼした効果について検証することで、その合理性について検討することを目的とする。容積移転による歴史的環境保全・土地高度利用が実現すると、歴史的環境の存在による効果、容積緩和を受けた開発による効果、及びそれらの相乗効果が総体として現れると考え、ヘドニック法によりその外部効果の推計を行った。その結果、高層化や公共施設負荷集中等による悪影響を上回るだけの有意な社会貢献を地域にもたらしていることが推定され、容積移転による歴史的環境保全には一定の合理性が認められることが確認された。一方で、容積移転と関係なく存在する歴史的環境や容積緩和を受けた開発は、有意な外部効果が見られなかったため、容積移転により一つのプロジェクトとして歴史的環境保全と新たな開発が実現することによって何らかの相乗効果が生まれていると推察された。事例分析を通して、多様な用途による集客効果、存在感増大による景観形成効果、歴史性による地域の個性創出効果が周辺にもたらされていることが示唆された。
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© 2008 公益社団法人 日本都市計画学会
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