抄録
出身地の多様性は企業パフォーマンスを規定する重要な要素であると考えられてきた。他方で、地方の振興の観点からは、先進地域からの暗黙知を含む情報の導入が有効であると考えられてきた。既往研究では国際的な出身地の差異が扱われているのに対し、本稿では、国内スケールで見た出身地に着目し日本の中小企業の代表者の出身地を分析し、上の二つの効果が企業の業績に及ぼす影響を検証した。結果、前者の経路は従業員数の成長率で示される一般的な企業成長を、後者は特許で示されるイノベーションを説明するのにより適切であることが明らかになった。これに加えて、双方の経路は、高度な産業を充実させることで地域の産業の多様性を高めることに寄与している。この結果は、国土スケールでの総人口移動の増加が産業振興に対して有する意義を示唆するものである。