抄録
本曽川筋の発電所や関連施設には、桃介橋や読書発電所など現在もその機能を果たすと同時に景観的にも優れた施設が多い。大正の初期ここに水力発電を起こす際には、既存権益との摩擦や「寝覚ノ床」に代表される本曽川沿いの風景美保存をめぐって地元にはかなり激しい反対運動があった。当時発電水利使用の許可 (特許) にあたっては、地方庁令によって地元の意見を聴取する制度があった。長野県にはこの地元諮問制度があり、その項目として既設水利事業や漁業、流木等のほか名勝旧蹟に及ぼす影響も含まれていた。本研究ではこの地元諮問制度の特徴、機能等について調べ、優れた土木遺産が残されたこととの関達を検討する。