岡山市街地にはかつての灌漑農業の歴史を物語る多くの用水路が網の目のように残り、そこに瀬戸内の石造文化圏ならではの石造物 (桁橋、水門、階段など) が数多く残っている。こうした独自の風致・風景が、その価値が知られないままにどんどん風化・消滅してしまうことは、地域性のあるまちづくりを考える上でしのび難いことである。そこで、市内中心部全域に残存する水路関連の石造施設の悉皆調査を行い、今後のあり方を考える上で基礎資料を提示することにした。調査によって全部で1739件もの石造物と多くの石積護岸が残っていることを確認することができた。