抄録
市場競争は財・サービスの価格と品質を中心に展開されるが、中小の多数の事業者が存在しかつサービスの供給を個々の運転手に依存したタクシー市場における競争は、極めて特殊な様相を帯びている。本研究においては、利用者への意識および認知調査を通じてタクシーサービスの特徴づけを行い、シェアの小さい多数の中小事業者を抱えるというタクシー市場の組織形態が、利用者の認知と選択可能性およびサービス評価に及ぼす影響を分析している。これにより、組織形態を数の問題として見た場合、都心市場においては数の集約化によって利用者の認知と選択可能性を高め、より高い評価を得る可能性が示唆された。加えて、運賃設定の弾力化あるいは差別化により、特定事業者のサービスを待つという動機が生じ、選択可能性が増大するという関係が捉えられた。