抄録
本研究では、中年期以降の心理発達課題である世代性と、次世代との関わり行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。 因果分析を行うため、 1年間のスパンを設けた2時点パネル調査を行った。 対象者は高齢者400名(男性244 名、女性156名) であり、 平均年齢は 71.92歳 (SD=12.03) であった。交差遅れ効果モデルにおける多母集団同時分析を行った結果、男性では世代性と行動の双方向からのパスが有意となる循環モデルが示された。一方女性では、行動から世代性へのパスのみが有意となった。男女ともに次世代との関わり行動から世代性への影響が示されたことから、世代間交流行動の機会を作ることで世代性発達を促進しうるという可能性、そして世代性の発達が世代間交流行動の効果として位置づけられうる可能性が示された。