抄録
N-フェニルホルムアミドキシム類のベンセン環の置換基およびホルムアミドキシムのO-置換基の殺菌活性に対する影響を調べた. 殺菌活性はベンズイミダゾール系殺菌剤に耐性を示す Botrytis cinerea に対する活性を指標とした. ベンゼン環置換基についてはまずハロゲン, アルキル, アルコキシの様々な置換様式について in vivo の試験で活性を調べ, 3, 5-ジクロルフェニルの4位の置換基が活性に非常に大きな影響を与えることを把握した. そこで, この4位置換基について in vitro で活性を調べ, 構造活性相関を物理化学的パラメータを用いて重回帰分析により解析した. その結果, 置換基が直結した炭素の13C-NMRケミカルシフトを指標とする置換基の電子的性質および置換基のある一定方向の最大幅が, 活性の大きさの変化に有意に効果を及ぼすことがわかった. また, この置換基の性質は殺菌活性に対する影響ばかりでなく, ベンズイミダゾール系殺菌剤との負相関交差耐性という特性にもきわめて重大な影響を与えていた. ホルムアミドキシムのO-置換基についても, 同様に重回帰分析により定量的構造活性相関を解析したところ, 化合物の疎水性および置換基の最大幅 (B5) にそれぞれ最適値が存在することがわかった.