各種毒性試験を実施し, バリダマイシンAの安全性評価を行なった. バリダマイシンAはラットおよびマウスにおける急性毒性が低く, 投与可能な最大投与量においても死亡例はみられずきわめて安全性の高い薬剤である. バリダマイシンA5%液剤の眼および皮膚に対する一次刺激性は軽度であり, 皮膚感作性は認められなかった.
ラットおよびマウスを用いた亜急性毒性試験ではバリダマイシンAの10%含有飼料を投与しても, すべての検査項目に検体投与による影響は認められなかった.
ラットおよびマウスを用いた慢性毒性・発癌性試験ではバリダマイシンAの10,000ppm含有飼料を投与した雄ラットに軽度の体重増加抑制, Ht, Hbおよび赤血球数の軽度な減少が認められ, 10,000ppm含有飼料を投与した雌雄マウスに赤血球数の軽度の減少が認められた. これら慢性毒性試験における最大無作用量はラットで1000ppm (雄40.4mg/kg/day, 雌47.2mg/kg/day), マウスで10,000ppm (雄1174mg/kg/day, 雌1124mg/kg/day) と判断された. いずれの動物においても催腫瘍性は認められなかった.
ラットを用いた繁殖性に及ぼす影響試験, ラットおよびウサギを用いた催奇形性試験では繁殖性に対する影響および催奇性は認められなかった.
細菌を用いた復帰変異性試験, DNA修復試験および培養細胞を用いた染色体異常試験では, いずれにおいても変異原性は陰性であった.
バリダマイシンAは昭和47年5月2日に稲の紋枯病を対象に登録され, 以後, 稲の疑似紋枯症, イグサ紋枯病, ショウガの紋枯病, イチゴの芽枯病, ダイコン亀裂褐変症, フキの白絹病, レタスのすそ枯病, バレイショの黒あざ病, てんさい, トマト, キュウリの苗立枯病等を対象に登録された.
バリダマイシンAは作物中に残留せず, 水中および土壌中において速やかに分解され, しかもヒトに病原性を示す菌に対する抗生物質との間に交叉耐性は認められず, 安全性の高い農薬として評価されている.
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