日本公衆衛生雑誌
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原著
介護保険居宅サービス事業所管理者と訪問サービス従業者の感染予防対策の実態
中野 匡子小野 喜代子安村 誠司
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2002 年 49 巻 12 号 p. 1239-1249

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抄録
目的 地域の訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護事業所の感染予防対策の実態を明らかにする。
方法 福島県の一社会福祉事務所(現・保健福祉事務所)の所管する地域内の介護保険居宅サービス事業所(訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護事業所)の全事業所90か所の管理者82人(回答率90.2%)と従業者1,024人(回答率57.2%)に郵送アンケート調査を行った。調査項目は,職員の健康管理,備品,感染予防に関する研修,感染予防マニュアル,手洗いの 5 項目とした。
成績 1. 健康管理:職員の健康診断を年 1 回以上実施している事業所は94.6%,年 1 回以上受診している従業者は87.6%であった。
 2. 備品:使い捨て手袋の整備率94.6%に比べ,手指洗浄設備,ペーパータオルの整備率は,各々43.2%,39.2%と低かった。物品管理責任者の設置率は43.2%,物品管理記録の整備率は20.8%に過ぎなかった。血液・排泄物に触れる際の手袋使用率は82.6%であった。
 3. 研修:研修を実施している事業所は40.3%,研修に参加したことがある従業者は30.2%のみであった。研修を実施しない事業所の76.2%が「時間がない」を理由としていたが,研修に参加しない従業者の78.5%が「研修の機会がない」を理由としており,管理者は職員の研修の機会を設ける必要があると思われた。
 4. マニュアル:感染予防マニュアルがある事業所は68.9%,マニュアルを利用している従業者は44.3%に過ぎなかった。マニュアルがない事業所のうち,作成予定の事業所は47.8%のみであった。マニュアルがある事業所で,「よく利用されている」と答えた事業所は42.9%,「マニュアルがある」と認識している従業者は69.4%に過ぎなかった。
 5. 手洗い:手洗い時期,手洗い方法,手拭き方法の取り決めをしている事業所は各々73.0%, 78.4%, 35.1%であった。ケアの後の手洗い実施率92.0%に比べ,ケアの前は52.2%と低かった。血液・排泄物に触れた後の手洗い実施率は74.6%であった。流水と石鹸,または流水と石鹸と消毒剤による手洗いは82.7%で行われていたが,手拭きにペーパータオルを使用する者は7.5%のみであった。
結論 介護保険居宅サービス事業所の感染予防対策は,備品,研修,マニュアル,手洗いについて改善が必要である。改善のためには事業所管理者の役割が重要であり,今後,社会福祉事務所や保健所は,事業所管理者への指導と支援をさらに積極的に推進する必要がある。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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