日本公衆衛生雑誌
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資料
健常超高齢者と入院中超高齢者における血清中元素濃度の比較
若本 ゆかり荒巻 輝代奥田 昌之國次 一郎瀧田 覚小早川 節金山 正子杉 洋子田中 愛子芳原 達也
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キーワード: 超高齢者, 微量元素, 亜鉛, リン
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2002 年 49 巻 2 号 p. 106-113

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抄録

目的 同じ超高齢者であっても,健康で活動的な自立した健常超高齢者と,疾患を有し入院中の超高齢者との相違を把握するために両者の血清中元素濃度を測定し,比較検討を行うことを目的とした。
対象および方法 健常超高齢者は,1999年 9~11月に住民健診に訪れた高齢者の中で生化学検査結果が正常範囲であり,かつ日常生活活動内容から自立と判定できた85~91歳(平均年齢87.3±1.7歳)の超高齢者,男性18人,女性15人,計33人であった。一方の入院超高齢者は1999年10月に入院中であった85~92歳(平均年齢87.8±2.2歳)の超高齢者,男性14人,女性26人,計40人であった。それぞれ血清中マンガン(Mn),亜鉛(Zn),銅(Cu),鉄(Fe),カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),リン(P)濃度(μg/ml)を測定し,両群間の元素濃度の比較と,各元素濃度間および各元素濃度と生化学検査値間の相関関係について検討を行った。
結果 1. 血清中 Ca, Mg, P, Zn 濃度は健常群のほうが有意に高く,中でも P と Zn 濃度で顕著な差が認められた。一方濃度比の上昇が疾患との関連を示すと報告されている Cu/Zn 濃度比は健常群のほうが有意に低かった。
2. 両群ともに有意な相関が認められた組み合わせは,血清中元素濃度間では Zn と Ca,血清中元素濃度と生化学検査値間では P と総コレステロールの計 2 組であった。血清中元素濃度間では,両群ともに比較的高い相関係数を示す組み合わせには Zn が含まれていた。また健常群では血清中 Zn と Fe 濃度に特に高い相関が認められた。
結論 以上の結果から健康で活動的な超高齢者は,疾患を有す超高齢者より血清中元素濃度が高いこと,中でも P と微量元素 Zn 濃度の高いことが認められた。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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