抄録
目的 高齢者の受療行動のメカニズムを調べることを目的に,高齢者が開業医や地域医療機関,高次医療機関にどのようなニーズを持っているのか,主治医に何を求めているのかに関する質的調査を行った。
方法 65歳以上の高齢者に対してフォーカスグループインタビューを行い,医療機関や主治医に何を求めるのかに関する 8 つのテーマに基づいたグループディスカッションを行った。調査終了後,フォーカスグループで抽出されたデータの考察を補完するため,フォローアップアンケートを参加者全員に行った。
結果 無床診療所には「医療設備」や「緊急時の対応」に不満を感じる一方で,「(同じ医師による)継続的管理を受けられる」ことや「(診療や投薬に対する)希望を考慮してくれる」ことをメリットとして挙げた。一方,町立病院には「医師が頻繁に変わる」ことや「診療能力に限界がある」ことをデメリットとしながらも「開業医にはない診療科や機器がある」ことや「人柄に惹かれる医師がいる」ことを理由に受診していることが多くのグループで話された。大病院に対しては「設備」,「診療科」,「専門医」をキーワードとして「医療レベルが高く,重症疾患にも対応できる気がする」と表現する信頼感を多くの参加者が語った。また,医療従事者全般に対しては“コミュニケーションの取りやすさ”としての「心のつながり」,すなわち“気軽に話しのできる関係”を求めていることを強調していた。フォローアップアンケートでは,「総合的な診療能力」に対する優先順位が主治医の診療能力に関わるその他の 2 つの要素に比べて有意に低く,一方,主治医のパーソナリテイに関わる要素としては「聞き手としての能力」の優先順位が「話し手としての能力」のそれと有意差をもって高かった。
結論 今回のフォーカスグループの結果から,患者は医療機関の種類によってニーズを使い分けている可能性が示唆された。特に開業医に対しては“心のつながり”と「適切に専門医へ紹介できる能力」を,大病院には医療機器や複数の診療科に対する期待がより強いことが予想された。また,主治医には全般的に「総合的な診療能力」よりも「専門的な診療」ないしは「専門医に適切に紹介する能力」を,「わかりやすく説明する能力」よりも「話しをじっくり聞いてくれること」を期待する傾向にあることが推測された。