抄録
目的 介護老人保健施設入所者の日常生活活動(ADL)能力の変化に関連する機能領域および ADL の変化を評価するための適切な評価尺度を明らかにすること。
方法 1999年 6 月から2000年 8 月までの期間における大阪府 M 市立介護老人保健施設(以下,施設)の 3 か月以上の入所者123例を分析の対象とした。方法は,厚生省判定基準,Barthel Index(以下,BI),Functional Independence Measure(以下,FIM),英国人口統計情報局社会調査部による尺度(以下,OPCS)を用い,それぞれ入所時と入所 3 か月後に評価した。また,これら評価尺度の「得点の変化度(responsiveness)」を分析した。機能訓練は入所期間における平均回数をもとに,「週 2 回以上」,「週 2 回未満」で区分した。これら評価尺度の得点の分布(天井および床効果),入所中の得点の変化および機能訓練の頻度との関連について分析した。
成績 厚生省判定基準と BI, FIM および OPCS 得点について,床効果を示した者の人数は FIM が最も少なかった。次に,これら評価尺度の平均得点について,FIM は「入所時」が70.7±30.8点,「入所 3 か月後」が71.6±30.6点であり,有意な得点の増加を認めた。各評価尺度を機能領域別にみると,FIM の「移乗」,「移動」,「階段昇降」の入所時得点がそれぞれ4.6±1.8点,3.8±2.3点,3.0±2.1点,入所 3 か月後の得点がそれぞれ4.8±1.7点,4.0±2.2点,3.2±2.1点であり,いずれも有意な得点の増加を認めた。また,これら移動に関する FIM 3 領域の合計得点の変化度が最も大きかった。さらに,FIM 移動領域の合計得点の変化から「改善」と評価された者の割合を求め,機能訓練頻度と関連のある要因について分析すると,機能訓練頻度が「週 2 回以上」の者は「週 2 回未満」の者に比べて「改善」した者が有意に高い値を示した。
結論 老人保健施設入所者における ADL 評価について,本研究で用いた評価尺度の中で最適な尺度は FIM であった。なかでも移動領域の得点の変化度は最も大きいことが示された。FIM 移動領域の評価は,入所中の ADL の変化を簡便に評価するために,あるいは中間評価として入所者の ADL を把握するために最適な尺度であると考える。