日本公衆衛生雑誌
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女子学生の偏食行動様式別食習慣および健康習慣の実態
永嶋 久美子坂口 早苗坂口 武洋
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2002 年 49 巻 5 号 p. 447-455

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抄録

目的 大学などで健康教育を実施する上で,日本人の食生活の変遷期に生まれ育った女子学生たちの偏食に対しての行動様式,食習慣および健康習慣についての実態を知るために自己記入質問調査を実施した。特に,女子学生たちの偏食に対しての行動様式を把握し,将来の健康維持・増進をはかる指針を得るように試みた。
方法 関東地方の 6 大学(短期大学,大学院を含む)に在籍する女子学生に対してアンケート調査を1999年,2000年に実施した。偏食に対しての行動様式,食習慣については成人一般向食習慣調査および貧血者用食習慣調査に準じ,食物摂取頻度などにより対象者をランク分けした。健康習慣については,健康習慣 8 項目を用いてランク分けした。食行動については,食行動質問表を基に領域別に解析した。
結果 調査対象者は,815人であった。平均年齢は19.5±1.5歳で,19歳が最も多く,60.7%であった。偏食に対しての行動様式では,「偏食なし」の者は156人(19.1%),「嫌いでも食べることが多い」者は144人(17.7%),「食べる努力をする」者は200人(24.5%),「残すことが多い」者は161人(19.8%),「嫌いなものは食べない」者は151人(18.5%),無回答などのその他は 3 人(0.4%)であった。偏食の多い者は貧血者・貧血予防を重点にした食習慣調査の得点が低く,健康習慣不良の区分を占める割合が多く,良好の区分を占める割合が少なかった。また,偏食の多い者に「麺類を好む」,「スナック菓子を好む」,「ファストフードをよく利用する」と答えた者が多く,麺類・スナック菓子の嗜好程度およびファストフードの利用頻度と偏食に対しての行動様式との間にそれぞれ有意な関係が認められた。
結論 過半数は食習慣や健康習慣に問題はないが,30%程度に不良と判定される者がいた。また,食欲の認知調節系に「ずれ」や「くせ」があり,栄養のバランスより簡便性や嗜好にはしりやすい傾向が認められた。偏った食習慣,不良な生活習慣および食欲の認知調節系の「ずれ」や「くせ」の早期発見にこの簡易な調査は適している。偏食の多い者に対しては,好き嫌いにかかわらず何でも食べる努力をするように指導することが,将来の健康維持・増進につながっていくと考える。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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