日本公衆衛生雑誌
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49 巻 , 5 号
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論壇
原著
  • 相良 多喜子, 西条 旨子, 広川 渉, 森河 裕子, 三浦 克之, 田畑 正司, 中川 秀昭
    2002 年 49 巻 5 号 p. 389-398
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 骨量が最大となる高校生について骨密度と生活習慣,特に栄養素摂取や運動習慣との関連性を男女共に検討する。
    方法 798人の高校生(男子281人,女子517人)を対象に超音波による踵骨骨密度測定を行い,骨密度(Stiffness)と栄養素摂取量および生活習慣との関連を検討した。なお,栄養調査には厚生省健康指針策定委員会編による簡易食物摂取状況調査表を用いた。
    結果 男子では90,女子では77を Stiffness のカットオフ値としたところ,男子48人(17.1%),女子43人(8.3%)が骨密度低下と判定された。男子では骨密度低下群の身長と体重,一日当たりのエネルギー摂取量,たんぱく質摂取量,脂質摂取量,糖質摂取量は骨密度正常群に比べ有意に低かった。また,女子の骨密度低下群の体重および一日当たりのエネルギー摂取量,脂肪摂取量は正常群に比べ有意に低かった。しかし,ダイエットをしている者の割合は男女共に 2 群間で有意の差を認めなかった。また,カルシウムを多く含む食品の摂取頻度を検討したところ,牛乳をまったく飲まない者の割合は男女共,正常群に比べ骨密度低下群で有意に低く,男子では緑黄色野菜を食べる者の割合も有意に低かった。生活習慣との関連では女子では日光にあたるようにしている者の割合が骨密度正常群に比べ骨密度低下群で有意に少なかった。また,運動習慣として,現在(高校)および中学での運動部活動状況を調査した結果,学年による差を二元配置分散分析により考慮しても運動部活動をしている者はしていない者に比べ,男女共に Stiffness が有意に高かった。さらに,これらの骨密度低下と関連の認められた栄養摂取状況,生活習慣,運動習慣及び体重について各要因相互間の関連性を多重ロジスティックモデルにより調整したところ,男子では摂取エネルギーが少ないことが,女子では脂肪摂取量が少ない,現在(高校)の運動部活動をしていない,牛乳を飲まないことが他の要因とは独立に骨密度の低下と有意な関連があった。
    結論 これらのことから,高校生においても栄養素摂取状況と運動習慣は骨密度と関連を認め,男子においても女子と同様,適正な栄養素摂取が骨量の発達に重要であることが示唆された。また,牛乳の飲用は女子の骨密度の適正化に重要な要因であると考えられた。
  • 佐々木 恵, 山崎 勝之
    2002 年 49 巻 5 号 p. 399-408
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は主に大学生を対象としたストレス・コーピング尺度(General Coping Questionnaire: GCQ)の特性版の作成とその信頼性,妥当性の検討を行うことを目的とした。
    方法 調査Iから調査IVまで,それぞれ124人,784人,83人,83人の大学生が GCQ 特性版に回答した。質問紙は感情表出,情緒的サポート希求,認知的再解釈,問題解決の 4 下位尺度,5 件法からなるものだった。調査IVでは,妥当性の検証のために,GCQ 特性版に加えて仲間評定も行われた。
    結果 調査Iでは54項目からなる GCQ 特性版第 1 版から,32項目が GCQ 特性版第 2 版として選定された。調査IIから調査IVでは,GCQ 特性版第 2 版の尺度の因子的妥当性,内的整合性,検査-再検査信頼性,構成概念妥当性(認知的再解釈をのぞく),得点分布の正規性の証拠がそれぞれ得られた。
    結論 今後のストレス・コーピング研究を行うための,4 下位尺度からなる GCQ 特性版の標準化がほぼ完了した。
  • 中村 好一, 金子 勇, 河村 優子, 坂野 達郎, 内藤 佳津雄, 前田 一男, 黒部 睦夫, 平田 滋, 矢崎 俊樹, 後藤 康彰, 橋 ...
    2002 年 49 巻 5 号 p. 409-416
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 わが国における在宅高齢者の主観的健康感と関連する因子を明らかにする。
    方法 調査対象は全国20の市町村(東京都特別区を含む)の65歳以上の在宅高齢者より無作為抽出した6,094人である。2000年 9 月~11月に調査票留置法により情報入手した。各因子ごとに主観的健康感の分布を観察し,次いで unconditional logistic models を用いて各因子ごとの非健康群に対する健康群のオッズ比とその95%信頼区間を求めた。
    成績 対象者6,094人中,5,565人(91.8%)から回答を得た。主観的健康感について「非常に健康」または「健康な方だと思う」が64.4%,「あまり健康ではない」または「健康でない」が28.8%,無回答などが6.8%であった。定期的な通院と日常生活動作の低下が主観的健康感の悪化と最も関連していた。85歳以上と比較して75~84歳は主観的健康感が高かったが,65~74歳はそれほど高くなかった。適度な運動の心がけ,グループ内での補佐的な役割,社会活動参加,生きがいや日常生活への活力を持つことが,主観的健康感の向上や保持に関連していた。社会活動参加の理由については,「楽しいから」という積極的な理由以外での参加でも,主観的健康感は高い傾向がみられた。
    結論 消極的理由であっても,社会活動参加が高齢者の主観的健康感を向上・保持させる可能性が示された。
  • 武田 俊平
    2002 年 49 巻 5 号 p. 417-424
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 地域在住高齢者の健康状態を全体的に把握するために,介護保険における要介護等認定者数を基に要介護未認定期間(健康寿命)を算出するとともに,要介護等の原因疾患を分析するために,高齢人口 1 万対要介護時間を算出した。
    方法 仙台市太白区に在住する65歳以上の要介護等認定者数を基に Sullivan 法によって要介護未認定期間を算出した。さらに,同じ要介護等認定者数を基準人口によって年齢調整した上,要介護度に対応する要介護認定等基準時間を基に,65歳以上の高齢人口 1 万対年齢調整要介護時間を,主治医意見書における要介護等の原因疾患ごとに算出した。
    成績 要介護等認定者は,65歳以上の男の人口の7.5%(年齢調整後7.7%),女の人口の12.5%(年齢調整後10.7%)を占めた。男の場合,要介護未認定期間は,65歳で16.1年,75歳で9.2年,85歳で4.4年であり,要介護期間は2.0~2.1年だった。女の場合,要介護未認定期間は,65歳で19.3年,75歳で11.1年,85歳で4.8年であり,要介護期間は4.6~5.3年だった。さらに,高齢人口 1 万対年齢調整要介護時間は,男が874時間,女が1,125時間であり,そのうち,男の場合,脳血管疾患が51%(うち,脳梗塞が40%),痴呆性疾患が11%を占め,女の場合,脳血管疾患が37%(うち,脳梗塞が26%),骨格系疾患が20%,痴呆性疾患が18%を占めた。
    結論 要介護未認定期間は,女が男より,65歳で3.7年,75歳で2.3年,85歳で0.5年長いが,要介護期間も,女が男より,65歳と75歳で3.2年,85歳で2.6年長く,女の介護予防が緊急の課題である。要介護等の原因疾患として,男の場合,脳血管疾患(とくに,脳梗塞),痴呆性疾患が多く,女の場合,それに加えて,骨格系疾患が多く,これらは三大要介護疾患と言える。
  • 杉澤 秀博, 深谷 太郎, 杉原 陽子, 石川 久展, 中谷 陽明, 金 恵京
    2002 年 49 巻 5 号 p. 425-436
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 本研究の目的は,介護保険制度下における在宅介護サービスの過少利用の要因を分析することにある。過少利用は支給限度基準額を介護ニーズ量とみなし,それと対比して実際の利用額がどの程度乖離しているか,その割合で評価した。行動モデルを参考に,ニーズ要因として要介護度を,過少利用の促進要因として同居家族の存在および低所得を,先行要因として家族介護意識を投入し,これらの要因が過少利用に与える直接効果ならびにニーズ要因と促進要因との交互作用効果を検討した。
    方法 東京都内の 1 つの区を対象に,認定者(施設サービス利用者を除く)から1,500人を無作為に抽出した。要支援と要介護度 1 については認定者本人に,要介護度 2 以上については介護者を対象に訪問面接調査を実施した。実施時期は2000年11月であった。在宅介護サービス利用に関する情報は保険者である区から入手した。
    結果 過少利用の割合は69%であり,利用量は介護ニーズ量の半分以下にとどまっていた。過少利用の要因を分析した結果,同居家族がいる,年収が120万円未満,認定者や介護者が家族介護意識をもっている場合に過少利用の割合が高かった。さらに要介護度と同居家族の有無との間に有意な交互作用がみられ,同居家族がいない場合には要介護度に関係なく過少利用の割合は低かったが,同居家族がいる場合には要介護度が高くても在宅介護サービス利用量は増加していなかった。
    結論 介護保険制度では要介護度の認定にあたって,私的な介護基盤を考慮しないとしているが,現実は私的な介護基盤がある世帯では認定者の過少利用が多く発生していること,さらに低所得者に対しては利用料負担の減免措置がとられているにもかかわらず,過少利用が高頻度で発生していることが示唆された。
公衆衛生活動報告
  • 宮井 正彌
    2002 年 49 巻 5 号 p. 437-446
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 姫路独協大学における学生に対する禁煙キャンペーンを行うための準備として,学生の禁煙に対する実態調査を行った。その結果を報告する。
    方法 対象は本学に籍を置く全学部学生と大学院生である。これらの対象者に対して2000年 4 月の身体検査時にアンケート用紙を配布し,その場で書き込ませて回収するという方法を用いた。質問項目は全員を対象としたものの他に,喫煙している者(喫煙者),かつて喫煙したが現在はしない者(断煙者),喫煙しない者(無煙者)を対象にしたものを設け,三者それぞれの意見を聞き,その相違について検討した。
    結果 1) 喫煙した者の44.0%が17歳までに喫煙を開始していた。
     2) 無煙者は喫煙者にくらべ,喫煙について批判的であり,断煙者の態度は両者の中間に位置した。
     3) 吸い始めるきっかけには,積極的な理由はなく,ただなんとなく,が多く,友人先輩が吸う,がこれに続いた。
     4) 喫煙者は,日本の喫煙率を下げるべき(66.3%),喫煙の人体への影響を国民に知らせるべき(82.1%),学内の煙草自動販売機の撤去(17.7%),にそれぞれ賛意を示した。
    結論 1) 吸い始めるきっかけには,積極的な理由はなく,ただなんとなく,が多かった。しかし,友人先輩が吸う,がこれに続き,また,家族のなかの誰かが喫煙することが本人の喫煙に影響を与えていることから,周囲の影響も考えられる。
     2) 喫煙者は「吸い過ぎなければ大丈夫だろう」という意識を持ちつつ,法律面ならびに健康面でよくないということを知り,気にしながら吸い続け,そして喫煙はやめたい,やめるべきだ,と考えていることがうかがえた。
資料
  • 永嶋 久美子, 坂口 早苗, 坂口 武洋
    2002 年 49 巻 5 号 p. 447-455
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 大学などで健康教育を実施する上で,日本人の食生活の変遷期に生まれ育った女子学生たちの偏食に対しての行動様式,食習慣および健康習慣についての実態を知るために自己記入質問調査を実施した。特に,女子学生たちの偏食に対しての行動様式を把握し,将来の健康維持・増進をはかる指針を得るように試みた。
    方法 関東地方の 6 大学(短期大学,大学院を含む)に在籍する女子学生に対してアンケート調査を1999年,2000年に実施した。偏食に対しての行動様式,食習慣については成人一般向食習慣調査および貧血者用食習慣調査に準じ,食物摂取頻度などにより対象者をランク分けした。健康習慣については,健康習慣 8 項目を用いてランク分けした。食行動については,食行動質問表を基に領域別に解析した。
    結果 調査対象者は,815人であった。平均年齢は19.5±1.5歳で,19歳が最も多く,60.7%であった。偏食に対しての行動様式では,「偏食なし」の者は156人(19.1%),「嫌いでも食べることが多い」者は144人(17.7%),「食べる努力をする」者は200人(24.5%),「残すことが多い」者は161人(19.8%),「嫌いなものは食べない」者は151人(18.5%),無回答などのその他は 3 人(0.4%)であった。偏食の多い者は貧血者・貧血予防を重点にした食習慣調査の得点が低く,健康習慣不良の区分を占める割合が多く,良好の区分を占める割合が少なかった。また,偏食の多い者に「麺類を好む」,「スナック菓子を好む」,「ファストフードをよく利用する」と答えた者が多く,麺類・スナック菓子の嗜好程度およびファストフードの利用頻度と偏食に対しての行動様式との間にそれぞれ有意な関係が認められた。
    結論 過半数は食習慣や健康習慣に問題はないが,30%程度に不良と判定される者がいた。また,食欲の認知調節系に「ずれ」や「くせ」があり,栄養のバランスより簡便性や嗜好にはしりやすい傾向が認められた。偏った食習慣,不良な生活習慣および食欲の認知調節系の「ずれ」や「くせ」の早期発見にこの簡易な調査は適している。偏食の多い者に対しては,好き嫌いにかかわらず何でも食べる努力をするように指導することが,将来の健康維持・増進につながっていくと考える。
  • 大熊 和行, 寺本 佳宏, 福田 美和, 高橋 裕明, 中山 治, 和田 文明
    2002 年 49 巻 5 号 p. 456-462
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく感染症発生動向調査情報を速やかに医療現場に配信し,医療現場の医師に情報交換の場を提供することにより,感染症発生動向調査情報が医師の診療により一層役立つものとするため,インターネット・E-メールを用いた情報受発信システム(メーリングリスト)を構築し,その有用性と運用方法の検討を行った。
    方法 三重県下の地区医師会である(社)四日市医師会の全会員を対象として,感染症情報メーリングリストへの登録意向調査を行い,登録希望のあった会員をメンバーとしてメーリングリストを構築した。約 3 か月の運用を行ったのち,メーリングリストの有用性と運用方法について,質問紙法による郵送調査を行った。
    結果 医師会の全会員474人を対象としてメーリングリストへの登録意向調査を行ったところ,回収数は173人(回収率36.5%)で,メーリングリストに登録すると回答した医師は73人(後に 2 人増の75人)であった。また,メーリングリストへの登録者75人を対象として,その有用性と運用方法の郵送調査を行ったところ,回収数は46人(回収率61.3%)であった。当研究部が発信する感染症週報および月報が有用と回答した登録者は26人(56.5%),情報交換の場として有用と回答した登録者は22人(47.8%)であった。
    結論 メーリングリストは,感染症発生動向調査事業の充実,特に,地域を細分化した詳細情報の提供や地域の医療現場からのコメント情報の提供等に有用であることが示唆された。
  • 関山 昌人
    2002 年 49 巻 5 号 p. 463-473
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/12/07
    ジャーナル フリー
    目的 県民満足度を高めるため,岩手県の保健福祉行政において企業経営手法の体系的な適用を試みたので,その運営手法の考え方と課題を示す。
    方法 顧客満足度が高められるよう,限られた資源の中で,住民ニーズに合致した「行政サービスの質」を確保し,これを生み出す「行政プロセスの質」および「行政資源の質」を高める手法として,TQM とマーケティングとを併用した手法が有効と考え,この適用を行った。
    結果 平成13年 5 月に岩手県が実施した県民満足度等に関するモニター調査(郵送法,調査対象者234人,回収率88.9%)によれば,高齢者対策,少子化対策,障害者対策,ユニバーサルデザイン対策に関する県民満足度は前年に比べ改善している。また,同年度に実施した政策評価において,既存事業207事業を見直し,「休止・廃止,縮小」,「統合等」,「拡大」を最終的に30事業,20事業,23事業とした。
    結論 企業経営手法の導入は間もないためその有効性を十分に確認できる状況に至っていないが,方針展開や政策評価等において一定の有効性があると考えた。今後は,特に「行政資源の質」を高め,より有効な手法となるよう改良を加えていくこととしている。
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