日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
高齢者向け運動のアドバイザー「健康御師」の養成および活動支援
重松 良祐中西 園弓北村 純
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2005 年 52 巻 4 号 p. 319-327

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抄録
目的 マンパワーや運営資金の比較的少ない自治体においても一定の効果をあげることのできる,運動アドバイザー養成システムを報告すること。さらに,養成後の支援や行政との協働を目指したプロセスとその成果を報告すること。
方法 三重県南勢志摩県民局の管轄下にある17市町村を対象地域とした(平均老年人口割合23.4%)。当局保健福祉部によって養成される運動アドバイザーを伊勢の地にちなんで「健康御師(けんこうおんし)」と名付けた。健康御師の候補者(本報告の対象者)は各自治体の推薦を受けた者とした。1 年目に基本的な養成講習会を開き,一定回数以上参加した者を健康御師と認定した。養成講習会は講義と実技で構成した。講義では運動の効果や長期的な運動プログラムの組み立て方を伝えた。実技では,日本体育協会の「中高年者の運動プログラムに関する総合的研究」のガイドラインを伝えた。2 年目には発展的な講習会を開き,(1)運動リーダーとして自治体の運動教室等で仲間に対して支援できる能力を養う,(2)地域で運動仲間を増やしていくためにグループづくりやイベント企画などの能力を養う,ことを意図した。また,健康御師同士のネットワーク構築や,健康御師としての活動を具体化するディスカッションを含めた。
結果 2 年間で137人を健康御師として認定することができた。アンケート調査から,参加者の93.8%がこの講習会を有意義と感じていた。全体の27.7%が実際に運動教室を主導するようになり,14.3%が今後伝えていきたいと考えていた。健康御師たちは,各自治体でオリジナル体操を自主的に創作し普及するようになったり,ウォーキングイベントを企画し実行したりするようになった。さらに他自治体で運動イベントを開いたり,その地域の健康御師に運動プログラムを伝達するなど,自治体の枠を越えた健康づくりへ発展していくようになった。
結論 このような運動アドバイザーの養成と活動を支援するシステムは他地域においても展開できると思われ,住民主体の健康づくりムーブメントを促進すると考えられる。
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© 2005 日本公衆衛生学会
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