日本公衆衛生雑誌
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乳幼児の救急医療に対する保護者の不安とその要因 —埼玉県の4市町の調査から—
下開 千春
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2005 年 52 巻 4 号 p. 349-355

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抄録

目的 乳幼児を持つ保護者の小児救急医療への不安の高まりが指摘されている。そこで本研究では,保護者の救急医療への不安の実態を明らかにし,保護者の不安の要因を探ることを目的とした。
方法 対象は,埼玉県 I 市,H 市,K 市,M 町の住民基本台帳から無作為に抽出した 6 歳未満の乳幼児をもつ保護者(主に母親)473人(有効回収率27.3%)。2003年10月に自記式質問紙を用いて郵送法による調査を行った。子どもの救急医療に関する不安内容,かかりつけ医の有無,かかりつけ医の緊急時対応の可否,過去に救急時に診察を断られた経験の有無などについて尋ねた。保護者の救急医療への不安度を尺度化し,属性や居住地の医療環境要因,個別の医療環境要因との関係を重回帰分析を用いて検討した。
結果 子どもの救急時には,どこかの医療機関ではみてもらえると保護者は思っているが,特定の医療機関を想定できないため,小児科医やかかりつけ医による十分な治療が受けられないといった質的な内容に対して不安を抱いていることが示された。家族のサポートが得られにくい核家族や父親の通勤時間が長い保護者では,救急医療への不安度は高くなっていた。かかりつけ医療機関数がない(または少ない),かかりつけ医が夜間・休日の診察を受け付けていない(または受け付けているかどうか不明),急病時に相談できる薬局や薬剤師がいない,過去に子どもの急病時に診察を断られた経験がある場合や,6 歳未満人口千人当たり小児科医師数が少ないという居住地の医療環境でも不安度は高いことが示された。
結論 行政や医療機関には,かかりつけ医など身近な一次医療圏の救急時対応の整備や医療機関における診療情報の共有などによって,保護者にとって安心して子育てのできる医療環境の充実を図ることが求められる。保護者には,救急時対応が可能なかかりつけ医を持つことや医療機関の救急時対応に関する情報を日頃から得ておくことなどにより,いざというときのための安心を確保することが求められる。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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