目的 配偶者・パートナーから暴力を受けた,あるいは行った両体験と,対象者および配偶者・パートナーの人口統計学的特徴,飲酒,原家族内の暴力体験とが関連しているか否かを明らかにする。
方法 福井県 A 市に住民登録している20~69歳の男女45,220人のうち,10歳年齢階級ごとに男女各100人を無作為抽出した計1,000人を対象とし,独自に作成した質問紙を用い郵送法による質問紙調査を行った。分析対象は248人であった。調査内容は,1)配偶者・パートナーから対象者が暴力を受けた,行った両体験:「身体的暴力」,「性的暴力」,「社会・経済的暴力」「精神的暴力」,2)対象者およびその配偶者・パートナーの人口統計学的特徴:性別,年齢,職業,学歴,年収,世帯,3)飲酒の有無,4)対象者の原家族内の暴力体験:両親間の暴力,親からの暴力であった。分析は,対象者の暴力を受けた,行った体験の有無を従属変数とし,リスク要因を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行った。
成績 248人のうち,男性は41.5%であった。配偶者・パートナーから何らかの暴力を受けた体験があると答えた対象者は46.4%,行った体験があると答えた者は43.1%であった。性別に差がみられたのは,暴力を受けた体験では「性的暴力」で,女性が男性より有意に多かった。暴力を行った体験では「身体的暴力」,「性的暴力」,「精神的暴力」で,いずれも男性が女性より有意に多かった。また,両親間の暴力体験,および親からの暴力体験があることは,配偶者・パートナーから暴力を受けること,および行うことを有意に増加させた。
結論 配偶者間暴力の早期発見には,地域で行われている母子,老人保健等の各種サービス提供時に,原家族内の暴力体験を質問項目に加えることの有用性が示唆された。