日本公衆衛生雑誌
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52 巻 , 5 号
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原著
  • 桝本 妙子, 小笹 晃太郎, 福井 和代, 森 雅彦, 福本 恵, 堀井 節子, 三橋 美和, 渡邊 能行
    2005 年 52 巻 5 号 p. 375-386
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 ヘルス・ビリーフ・モデルを構成する 7 つの要因が,禁煙行動への準備状態,すなわち「禁煙への関心度」をどの程度規定するかについて社会心理的に分析した。
    方法 京都府北部にある中規模事業所職員810人を対象に,無記名による自記式留め置き式質問紙調査を行った。534人から回答を得(回収率65.9%),今回は女性の喫煙者が少なかったことから,調査内容すべてに回答のあった男性喫煙者239人について分析した。調査内容は,性,年齢,業務の種類,勤務形態,禁煙への関心度(①関心なし②関心あるが 6 か月以内に禁煙考えていない③6 か月以内に禁煙したい),並びにベッカーらによるヘルス・ビリーフ・モデルの規定要因のうち 7 項目(①年齢,②罹患可能性,③重大性,④有効性,⑤障壁,⑥マスメディア,⑦周囲のすすめ)である。分析方法は,対象属性(年齢,業務の種類,勤務形態)別にみた禁煙への関心度と各項目への回答分布等の単純集計を行い,対象の背景を把握した。次いで,禁煙への関心度および 7 つの規定要因のスピアマン相関分析を行った。最後に,多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。
    結果 禁煙への関心度は,関心がない39.3%,関心あるが 6 か月以内に禁煙考えていない48.1%,6 か月以内に禁煙したい12.6%であった。屋外および屋内の現場に従事する者は禁煙への関心度が低く,管理職,事務職に禁煙への関心度が高かった。禁煙への関心度と 7 つの規定要因相互のスピアマン相関分析の結果,禁煙への関心度と有意な相関が認められたのは,重大性,有効性,障壁,マスメディア,周囲のすすめであった。多重ロジスティック回帰分析の結果,「関心なし/関心あるが 6 か月以内に禁煙考えていない+6 か月以内に禁煙したい」「関心なし/関心あるが 6 か月以内に禁煙考えていない」「関心なし/6 か月以内に禁煙したい」の組み合わせにおいて,禁煙に関心のある者ほど,喫煙による健康障害(マイナスの有効性)や禁煙によるがん予防効果への認識(積極的有効性)が高かった。それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は3.06 (1.76-5.31), 2.78 (1.58-4.90), 4.41 (1.75-11.15) であった。「関心なし/6 か月以内に禁煙したい」では,禁煙への関心度の高い者ほどがんに罹ったらもう助からないという認識(重大性)が有意に高かった。オッズ比(95%信頼区間)は1.88 (1.02-3.46) であった。
    結論 ヘルス・ビリーフ・モデルを構成する 7 つの規定要因のうち禁煙によるがん予防効果(有効性)と喫煙による健康障害の重大性への認識は,禁煙への準備状態を高める要因になることが示唆された。
  • 尾峪 麻衣, 高山 智子, 吉良 尚平
    2005 年 52 巻 5 号 p. 387-398
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 女子大学生の食生活状況および体型・体重調節志向の実態を把握し,それらと疲労自覚症状との関連を検討すること,また若者自身の食生活の見直しや指導のあり方について考察すること。
    方法 O 市某大学の女子大学生286人を対象として,食生活状況および体型・体重調節志向と疲労自覚症状についての自記式調査を実施し,18~25歳の有効回答275人について分析を行った。
    結果 1. 食生活状況の実態では,栄養バランスやカロリーを「考えている」者は過半数を超えていたが,一方で「1 日 2 食以上は単品である」者は約 3 割,朝食で欠食を「時々,いつもする」者は約半数存在した。また緑黄色野菜や淡色野菜を「ほとんど摂らない」者,インスタント食品類,菓子,ジュース類を「ほとんど毎日摂る」者はそれぞれ過半数を超えていた。
     2. 食生活状況と疲労自覚症状との関連では,食事の時間が不規則,単品のみの食事や間食の頻度が多い,朝食を欠食する,また緑黄色野菜,淡色野菜,果物をほとんどとらない,インスタント食品類,菓子の摂取頻度が多い者において疲労自覚症状が有意に高くなっていた。
     3. 体型・体重の調節志向の実態では,体型の自己評価では,「やや太り気味・太りすぎ」と評価する者,体重調節志向では「痩せたい」とする者がそれぞれ60.2%,79.5%であった。理想体重は平均47.2(±4.1)kg,理想 BMI は18.7(±1.2)で,理想体重は実際の体重は比べ 4 kg ほど低くなっていた。
     4. 体型・体重の調節志向と疲労自覚症状との関連では,自己の体型を「やや太り気味・太りすぎ」と評価している者,また,理想 BMI が小さく,現実の BMI との差が大きいほど疲労自覚症状は有意に高くなっていた。
    結論 客観的にみて肥満でない者の多くが痩せることを望んでいることが示された。一つ一つの食生活ではなく,疲労自覚症状と関連のみられた一連の食生活となりやすい生活の仕方それ自体が,疲労自覚症状を引き起こしていることが示唆された。食生活だけでなく,欠食をしないような生活を送るための働きかけ,客観的な評価に見合った真の意味での体型の自己評価ができるような働きかけが必要である。
  • 深堀 浩樹, 須貝 佑一, 水野 陽子, 松井 典子, 杉下 知子
    2005 年 52 巻 5 号 p. 399-410
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,特別養護老人ホーム入所者の家族介護者の精神的健康の実態を把握し,その関連要因を明らかにすることを目的とした。
    方法 東京都内の特別養護老人ホーム 3 施設の入所者の在宅生活時における家族介護者189人を対象に無記名自記式調査票による質問紙調査を行った。家族介護者の精神的健康の測定には,Goldberg らにより神経症患者のスクリーニングを目的に開発された尺度である精神的健康調査票(General Health Questionnaire)28項目版を用い,関連要因として家族介護者に関する要因,入所者に関する要因,家族介護者と入所者の関係に関する要因の 3 項目を想定した。分析にはロジスティック回帰モデルを用いた。
    成績 分析対象となった家族介護者145人のうち,精神的健康が低かった(GHQ-28≧7 点)人は59人(40.7%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,精神的健康と関連がみられたのはソーシャルサポート,入所者に対する面会時間であり,精神的健康はソーシャルサポートを受けている人ほど高く(OR: 0.10 (0.03-0.29)),面会時間が長い人ほど低い(OR: 5.80 (1.79-18.82))傾向がみられた。
    結論 施設高齢者の家族介護者に精神的健康を害している人が存在することが示され,支援の必要性が考えられた。家族介護者の精神的健康の向上には,家族会などのサポートグループの紹介や,家族の面会に着目し入所者と家族介護者のコミュニケーションを促進する援助を行うことが,有効であると考えられた。
  • 長谷川 美香, 別所 遊子, 細谷 たき子, 出口 洋二
    2005 年 52 巻 5 号 p. 411-421
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 配偶者・パートナーから暴力を受けた,あるいは行った両体験と,対象者および配偶者・パートナーの人口統計学的特徴,飲酒,原家族内の暴力体験とが関連しているか否かを明らかにする。
    方法 福井県 A 市に住民登録している20~69歳の男女45,220人のうち,10歳年齢階級ごとに男女各100人を無作為抽出した計1,000人を対象とし,独自に作成した質問紙を用い郵送法による質問紙調査を行った。分析対象は248人であった。調査内容は,1)配偶者・パートナーから対象者が暴力を受けた,行った両体験:「身体的暴力」,「性的暴力」,「社会・経済的暴力」「精神的暴力」,2)対象者およびその配偶者・パートナーの人口統計学的特徴:性別,年齢,職業,学歴,年収,世帯,3)飲酒の有無,4)対象者の原家族内の暴力体験:両親間の暴力,親からの暴力であった。分析は,対象者の暴力を受けた,行った体験の有無を従属変数とし,リスク要因を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行った。
    成績 248人のうち,男性は41.5%であった。配偶者・パートナーから何らかの暴力を受けた体験があると答えた対象者は46.4%,行った体験があると答えた者は43.1%であった。性別に差がみられたのは,暴力を受けた体験では「性的暴力」で,女性が男性より有意に多かった。暴力を行った体験では「身体的暴力」,「性的暴力」,「精神的暴力」で,いずれも男性が女性より有意に多かった。また,両親間の暴力体験,および親からの暴力体験があることは,配偶者・パートナーから暴力を受けること,および行うことを有意に増加させた。
    結論 配偶者間暴力の早期発見には,地域で行われている母子,老人保健等の各種サービス提供時に,原家族内の暴力体験を質問項目に加えることの有用性が示唆された。
  • 池田 俊也, 小林 美亜, 坂口 美佐, 兼児 敏浩, 廣瀬 昌博, 堺 秀人
    2005 年 52 巻 5 号 p. 422-432
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 医療安全対策を推進する上で,その基礎情報となる全国的な有害事象の発生頻度の把握が必要と考えられている。諸外国では,有害事象の頻度や種類を判定するため,看護師による第一次レビューと医師による第二次レビューの二段階による遡及的診療録レビューが相次いで実施されているが,この際には,レビュー者の判定の信頼性を確保することが重要な課題と認識されている。
     そこで本研究では,看護師による第一次レビューにおいて「有害事象の可能性あり」とスクリーニングされた診療録100冊を対象とし,3 人の医師レビュー者がマニュアルに基づき独立して有害事象に関する判定を行い,その結果を比較することによって,医師判定の信頼性の検証を行うことを目的とした。
    方法 某病院において,平成14年度に退院した精神科以外の入院患者の全診療録から無作為抽出した250冊のうち,看護師による第一次レビューで基準該当(+)あるいは要検討として判定された159冊の診療録から100冊を無作為抽出し,3 人の医師レビュー者が独立して有害事象の判定を行った。その後に,評価マニュアル作成者である WG の医師を加えた 4 人で,各レビュー者の判定結果について討議を行い,レビュー者全員の合意が得られた判定を最終判定とした。
     医師レビュー者の判定結果の信頼性を検証するために,各医師 2 人間の判定結果の一致率および,各医師の判定結果と最終判定結果の適中率を求めるとともに,κ 統計量を算出した。
    結果 4 人の医師が討議を行う前に,各医師が独立して100症例のうち有害事象(+)と判定した症例数は,18症例~27症例であった。各医師間の一致率は83.0~90.0%(κ=0.52~0.70)であった。
     4 人の医師の討議によって16例が有害事象(+)と最終判定され,7 例は判定保留となった。有害事象の有無に関する各医師の適中率は,医師86.0~96.8%(κ=0.56~0.88)であった。
     医療との因果関係に関する判定ならびに予防可能性に関する判定については,各医師の適中率は必ずしも良好ではなかった。
    結論 有害事象の有無については個々の医師の判定の信頼性は良好な水準であることが確認された。一方,医療との因果関係・予防可能性に関する判定については必ずしも良好ではなく,様々な専門領域の医師が討議の上で判定することが望ましいと考えられた。
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