日本公衆衛生雑誌
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原著
地域における過体重・肥満者を対象とした運動施設利用,栄養指導による個別健康教育と介入効果の検討 筑西市(旧協和町)国保ヘルスアップモデル事業
野田 博之原田 美知子横田 紀美子梅澤 光政山岸 良匡崔 仁哲池田 愛謝 翠麗若林 洋子稲川 三枝子鳥海 佐和子廣瀬 久美子大島 美幸椎名 由美谷川 武田中 喜代次嶋本 喬磯 博康
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2006 年 53 巻 10 号 p. 749-761

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抄録

目的 国保ヘルスアップモデル事業の一環として,過体重・肥満者に対する地域における健康教育の介入効果を検討する。
方法 茨城県協和町(現筑西市)において,1998年~2003年に基本健康診査を受診した35~60歳の過体重・肥満者(BMI 25.0 kg/m2 以上)の中で,2004年 5 月の時点でも BMI 25.0 kg/m2 以上で 6 か月の介入に同意した155人(男61人女94人)(31%)を分析対象とした。対象者は本人の希望を基に,高度介入群(栄養相談,月 1 回の個別健康相談,週 3 回の運動)59人,中等度介入群(栄養相談,月 1 回の個別健康相談,週 1 回または自宅での運動)62人,対照群(従来の保健事業のみ)34人の 3 群に分けた。メタボリックシンドロームの診断基準は 8 学会合同委員会基準に準じた。
成績 6 か月(5~10月)の介入にて追跡率は86%だった。介入前に両介入群(高度介入群,中等度介入群)と対照群の間に生活習慣および身体状況の有意な差はほとんどなかった。各介入群の運動施設利用回数は,高度介入群で平均6.4回/月,中等度介入群で平均1.9回/月であった。介入後,両介入群とも,食生活スコア,減塩スコア,脂質スコア,平均運動時間で有意な改善を認めたが,対照群では有意な改善は認めなかった。体重は対照群では平均70.6 kg から70.9 kg(P=0.84)と変化を認めなかったのに対し,高度介入群では平均71.4 kg から69.5 kg(P<0.0001),中等度介入群では平均69.5 kg から66.7 kg(P<0.0001)と減少した。ウエストは対照群で平均91.0 cm から93.9 cm(P<0.001)と増加したのに対し,高度介入群で平均90.1 cm から90.0 cm(P=0.29),中等度介入群で平均90.4 cm から88.7 cm(P=0.39)と有意な変化はなかった。メタボリックシンドロームの割合は対照群では介入前18.2%から介入後40.0%(P=0.01)と増加したが,高度介入群では15.3%から22.2%,中等度介入群では21.0%から19.2%と有意な変化はなかった。
結論 過体重・肥満者に対する健康教育の介入効果により,体重減少およびメタボリックシンドロームの抑制が高度・中等度介入群いずれにおいても認められた。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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