日本公衆衛生雑誌
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原著
全国の市区町村保健師における「連携」の実態に関する研究
筒井 孝子東野 定律
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キーワード: 保健師, 連携, 連携尺度
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2006 年 53 巻 10 号 p. 762-776

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抄録

目的 本研究では,保健師が連携業務を促進するための能力形成に関する方法論を検討するために,第 1 に,全国すべての市区町村保健師(以下,保健師と略す)を対象とし,彼らの連携実態を把握すること。第 2 に,連携をしている保健師と連携をしていない保健師の個人的要因や業務の特徴を明らかにすることを目的とした。
方法 調査の実施に先立ち,全国3,190市区町村に対して所属する保健師の所属部署を把握するための事前調査を実施し,保健師人数および勤務場所等の実態を把握した。次に,事前調査で把握された全国の市区町村保健師21,631人に対する郵送法による質問紙調査を実施した。調査期間は2003年12月から2004年 8 月までであった。
 なお調査項目の内容は,「保健師の性別,年齢,職位,最終学歴,総勤務年数,現在の所属機関での勤務年数,所属部署,業務の種類,実施の状況,連携および連携している機関,専門職等の状況,連携評価尺度における項目」とした。
結果 全国の保健師の約 8 割にあたる13,024人保健師のデータが収集された。まず保健師の連携実態としては,保健師は,保健所等の行政および保健医療機関との連携はなされているが,精神や障害者福祉施設との連携は密ではなく,また他機関の保健師や行政職,医師との連携はしていたが薬剤師や精神保健福祉士との連携は少なかった。
 また,専門機関ならびに専門職毎に分析した結果において,連携あり群は,無し群よりも連携得点は有意に高く,この得点は実態としての連携状況を反映していると考えられた。保健師は,業務経験が長い程,常勤である程,連携得点は高かった。また,学歴との有意な差は,20歳代以外はなかった。業務内容との関係においては,新規事業の展開やこのための予算獲得をしている群のほうが得点は有意に高かった。日常的な業務の実施状況からみると新たな知識を必要とする業務や高度な能力が要求される業務を行っている保健師の方がこの得点が高いことが明らかにされた。
結論 保健師における連携は,実態として保健関連部署や専門職との連携はよく行っていたが障害者福祉および精神福祉関連の部署との連携は密ではなかった。また連携得点によって連携の実態だけでなく,事業展開といった業務の評価も可能であることから,これらの得点別の研修等が実施されることが考えられる。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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