日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
徳島県における多機関連携による小児の生活習慣病予防活動
勢井 雅子中津 忠則横田 一郎津田 芳見石本 寛子棟方 百熊中堀 豊
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2009 年 56 巻 3 号 p. 163-171

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抄録

目的 「小児期より生涯を通じた健康づくり」推進のために,徳島県医師会生活習慣病予防対策委員会が平成12年に設立された。今回,学校,医師会,行政,大学等,多機関が連携して活動している本委員会のこれまでの経過と成果について報告する。
活動内容 平成12年度,小児の肥満状況の把握のために県内全小中学生の体格調査を開始し,そのデータを用いて徳島県標準体重と肥満度判定ソフトの作成を行った。また,平成13年,各機関の生活習慣病に対する取り組み調査を実施した。平成15年度,学校健診において高度肥満であったものと尿糖陽性者に医療機関受診を勧める「小児肥満の健康管理システム」および「学校糖尿病検尿システム」を全県下で開始した。これらの医療機関受診システムは学校健診の全数調査によって,肥満傾向児,高度肥満児等の実数を算出しながら継続している。また,約3000人の児童生徒の生活習慣調査を実施し,集団アプローチのための手引書も作成した。
結果 徳島県の児童生徒の身長は全国と変わらないが,体重とBMI(Body Mass Index)は大きいこと等が示された。生活習慣病に関する取り組み調査では学校保健委員会の実態や個人指導・栄養指導のマンパワー,各機関の連携事業の実施率を把握した。「小児肥満の健康管理システム」はほぼ一定の受診率を維持し,高度肥満児の約 8 割は医学的問題を持っていることを示した。生活習慣調査の結果,徳島県の児童生徒は全国調査と比べて少し起床時刻が早いこと以外,大きな差はみられなかったが,体格により生活習慣が違うこと,「家族といっしょに食事をする頻度」と他の生活習慣との関連などが示された。年次推移をみると,徳島県全体の肥満傾向児,高度肥満児は平成13年度,平成14年度をピークとして減少していることが観察された。
結論 徳島県では小児の生活習慣病予防活動を多機関の協力で維持している。体格の全数調査と医療機関受診を勧める個別アプローチが社会的な啓発活動となり,肥満児が減少していると考えられる。今後も関係機関が同じ目標に向かって連携を強化し,活動を継続していくことが必要である。

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© 2009 日本公衆衛生学会
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