日本公衆衛生雑誌
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56 巻 , 3 号
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原著
  • 森田 一三, 芝田 登美子, 羽根 司人, 中井 孝佳, 石垣 宏己, 峰 正博, 中垣 晴男
    2009 年 56 巻 3 号 p. 145-154
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 近年,日本において児童虐待の相談件数が増加している。そのような中,潜在的な被虐待児童を発見するうえで被虐待児童の特徴を明らかにすることが必要であると考える。著者らは近年の研究で要保護児童の口腔内状況と生活習慣が一般児童とどのように異なるのかを明らかにした。そこで,今回,さらにこれらの口腔の健康にかかわる生活習慣やう蝕の治療状況を総合的に評価を行い,虐待児童をスクリーニングするための指数を作成することを目的に本研究を行った。
    方法 児童相談所の一時保護所に入所した小学生の57人を対象とした。また小学校に通う575人の児童を対照群とした。ロジスティック回帰分析を用いて,生活習慣およびう蝕治療率の要保護児童との関連性を求め,偏相関係数からスコアを計算した。
    結果 要保護児童スクリーニング指数(MIES: Maltreatment Index for Elementary Schoolchildren)は 1-3 年生用,4-5 年生用,また,それぞれ生活習慣のみと生活習慣とう蝕治療率によるものを作成した。1-3 年生の生活習慣のみの MIES は,ねる前に歯をみがきますか(3 点),6 歳臼歯が,かむことに大事な歯であることを知っていますか(2),フッ素を塗ってもらったり,フッ素洗口をしたことがありますか(2),テレビゲーム以外にすきなこと(趣味)がありますか(2),子どもの歯と大人の歯の違いがわかりますか(1)であった。生活習慣とう蝕治療版 MIES ではフッ素を塗ってもらったり,フッ素洗口をしたことがありますか(4),ねる前に歯をみがきますか(3),外から帰ると手を洗いますか(2),乳歯で治療した歯の数が治療していないむし歯の数より多いですか(1)であった。
    4-5 年生の生活習慣のみの MIES は,外から帰ると手を洗いますか(4),朝ごはん後,歯をみがきますか(3),ねる前に歯をみがきますか(3),であった。生活習慣とう蝕治療版 MIES では,ねる前に歯をみがきますか(3),外から帰ると手を洗いますか(2),永久歯で治療した歯の数が治療していないむし歯の数より多いですか(5),であった。元のデータをこれらの MIES にあてはめた場合,スクリーニング精度の参考値としての敏感度と特異度の和は生活習慣のみの MIES に比べ生活習慣とう蝕の治療率の MIES が高かった。
    結論 小学生用の要保護児童をスクリーニングするための指数 MIES を開発した。生活習慣による要保護児童のスクリーニング指数に,う蝕の治療率の項目を加えることにより,スクリーニングの精度を向上させることが示唆された。
  • 高 燕, 星 旦二, 中山 直子, 中村 立子
    2009 年 56 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,都市部女性の生活満足感に関連する要因について,常勤と専業主婦別に共分散構造分析を用いて,構造的に明らかにすることを目的とした。
    方法 調査対象者は,川崎市全域を対象とした2003年川崎市生活調査で同意が得られた女性165人である。共分散構造分析モデルを用いて,生活満足度と三つの潜在変数,『自己効力感』(『 』は潜在変数を示す),『家族・友人関係』と『男女役割意識』の関連性を,常勤女性と専業主婦別に分析した。
    結果 ①「生活満足感」(「 」は観測変数を示す)は,三つの潜在変数と関連し,CFI=0.878,RMSEA=0.029と高い適合度が得られた。②常勤女性群では,「生活満足感」の30%が,専業主婦群では62%が,三つの潜在変数『自己効力感』,『家族・友人関係』,『男女役割意識』モデルで説明された。③性別役割感が低く自己効力感が高いことが,常勤女性群の生活満足感を直接に高め,専業主婦群では低くなる統計学的に有意な傾向が示された。家族や友人の支援があるほど,常勤女性群での生活満足感を間接的に高める傾向が示されたが,統計学上は有意ではなかった。
    結論 青壮年女性の生活満足感を規定する各要因の構造は就労状態によって,異なる可能性が示された。よって,個人の生活特性に応じた多様な健康支援施策が求められる。
公衆衛生活動報告
  • 勢井 雅子, 中津 忠則, 横田 一郎, 津田 芳見, 石本 寛子, 棟方 百熊, 中堀 豊
    2009 年 56 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 「小児期より生涯を通じた健康づくり」推進のために,徳島県医師会生活習慣病予防対策委員会が平成12年に設立された。今回,学校,医師会,行政,大学等,多機関が連携して活動している本委員会のこれまでの経過と成果について報告する。
    活動内容 平成12年度,小児の肥満状況の把握のために県内全小中学生の体格調査を開始し,そのデータを用いて徳島県標準体重と肥満度判定ソフトの作成を行った。また,平成13年,各機関の生活習慣病に対する取り組み調査を実施した。平成15年度,学校健診において高度肥満であったものと尿糖陽性者に医療機関受診を勧める「小児肥満の健康管理システム」および「学校糖尿病検尿システム」を全県下で開始した。これらの医療機関受診システムは学校健診の全数調査によって,肥満傾向児,高度肥満児等の実数を算出しながら継続している。また,約3000人の児童生徒の生活習慣調査を実施し,集団アプローチのための手引書も作成した。
    結果 徳島県の児童生徒の身長は全国と変わらないが,体重とBMI(Body Mass Index)は大きいこと等が示された。生活習慣病に関する取り組み調査では学校保健委員会の実態や個人指導・栄養指導のマンパワー,各機関の連携事業の実施率を把握した。「小児肥満の健康管理システム」はほぼ一定の受診率を維持し,高度肥満児の約 8 割は医学的問題を持っていることを示した。生活習慣調査の結果,徳島県の児童生徒は全国調査と比べて少し起床時刻が早いこと以外,大きな差はみられなかったが,体格により生活習慣が違うこと,「家族といっしょに食事をする頻度」と他の生活習慣との関連などが示された。年次推移をみると,徳島県全体の肥満傾向児,高度肥満児は平成13年度,平成14年度をピークとして減少していることが観察された。
    結論 徳島県では小児の生活習慣病予防活動を多機関の協力で維持している。体格の全数調査と医療機関受診を勧める個別アプローチが社会的な啓発活動となり,肥満児が減少していると考えられる。今後も関係機関が同じ目標に向かって連携を強化し,活動を継続していくことが必要である。
  • 髙石 鉄雄, 山田 美恵, 田中 勤, 金若 美幸, 柳澤 尚代
    2009 年 56 巻 3 号 p. 172-183
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 位置情報記録式 GPS 装置と心拍数記録装置を使って高齢者のウォーキング実態を把握し,その結果に基づくウォーキング方法の指導がウォーキングの内容に及ぼす影響について検討する。
    方法 ウォーキング習慣を持つ高齢者24人(69.6±4.5歳)に対して位置情報記録式 GPS 装置と心拍数記録装置を貸し出し,それらを自身で操作させることで,各被験者が実施しているウォーキングの実態(歩行経路,歩行速度および運動強度)を調査した。調査によって得られた結果と血液検査等の結果を基に各被験者に対して面接によるウォーキング指導を行い,その指導がこれらの調査項目に与える影響について検討した。
    成績 1) 指導前後におけるウォーキング中の歩行速度は,男女それぞれ 91.8±12.8 m/分から 97.3±12.2 m/分,および 81.4±9.7 m/分から 85.6±7.0 m/分へといずれも有意に増加した(P<0.05)。
     2) 心拍数予備量に対する割合で表した指導前後におけるウォーキング中の運動強度は,男女それぞれ37.0±10.5%から48.6±8.9%,および34.9±13.4%から47.7±8.8%へいずれも有意に増加した(P<0.01)。
    結論 位置情報記録式 GPS 装置と心拍数記録装置を併用することで,ウォーキング中の歩行速度,歩行経路および運動強度を明らかにすることができる。その結果を用いて個別に具体的なウォーキング指導を行うことは,ウォーキング内容の改善をもたらす。
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