日本公衆衛生雑誌
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原著
出産後の女性の喫煙行動とその関連要因
纐纈 朋弥松田 宣子
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2010 年 57 巻 2 号 p. 104-112

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抄録

目的 女性の出産後の再喫煙予防方法策定のための基礎資料とするために,妊娠中に禁煙した者のうち,産後,禁煙を継続する者と喫煙を再開する者の要因の差異を明らかにする。
方法 2007年 9 月~10月の期間に 1 歳 6 か月児健診対象となる児の母親1,736人(兵庫県 A 市1,030人,B 市706人)を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票は郵送し健診日に回収した。調査項目は,本人の年齢,最終学歴,子どもの数,家族構成,喫煙歴,喫煙に対する態度•知識,夫の喫煙歴,妊娠中の禁煙に対する満足度,育児不安である。
 有効回答数および有効回答率は A 市1,030人中754人(73.2%),B 市706人中575人(81.4%)であった。そのうち,本研究では,妊娠判明前に喫煙していたが妊娠中に禁煙した者を分析の対象とした。
 調査対象地域別に禁煙継続群と産後再開群で各項目に対する比較分析を行い,出産後の喫煙行動に影響する要因はロジスティック回帰分析で検討した。
結果 分析対象とした A 市754人,B 市575人のうち妊娠判明前に喫煙していた者は A 市153人(20.3%),B 市105人(18.3%)であった。そのうち今回の妊娠判明後禁煙した者は,A 市123人(80.4%),B 市88人(83.8%),産後18か月での喫煙再開者は A 市52人(42.3%),B 市45人(51.1%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,夫が喫煙している場合のオッズ比は A 市では,42.1(95% CI: 4.6-387.3),B 市では13.7(95% CI: 2.9-65.2)であった。妊娠中の禁煙満足度が高い場合のオッズ比は A 市0.11(95% CI: 0.04-0.33),B 市0.15(95% CI: 0.04-0.57)であった。更に A 市では育児ストレスが高い場合のオッズ比は6.0(95% CI: 1.7-21.2)であった。
結論 夫の喫煙が産後の再喫煙を促し,妊娠中の禁煙満足度が高いと産後も禁煙を継続することが示唆された。

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© 2010 日本公衆衛生学会
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