目的 平成18年度自己血糖測定(SMBG)とグループワークを併用した糖尿病予防自己管理支援事業が杉並区内 3 保健センターで実施された。糖尿病予防自己管理支援事業前後で対象者の HbA
1c の変化にいくつかのパターンが認められ,パターン別にその特徴や事業参加の効果を明らかにし,今後の事業運営のあり方を検討することを目的とした。
方法 糖尿病予防自己管理支援事業前後の HbA
1c の変化から改善群,悪化群,良好維持群に分類し,事業前後の糖尿病の知識,食事や運動等の行動,測定データの変化を検討した。
結果 糖尿病予防自己管理支援事業参加者は,改善群10人,悪化群 1 人,良好維持群13人に分類,悪化群の記述および改善群と良好維持群 2 群間の比較により事業参加による効果を検討した。良好維持群と改善群の 2 群の基本的特性は,性別では男性がそれぞれ 4 人,3 人,平均年齢はそれぞれ58.9±10.3歳,62.4±7.6歳,糖尿病家族歴は改善群が良好維持群のほぼ 2 倍であった。事業前の HbA
1c は良好維持群5.5±0.5%,改善群6.4±0.6%であった。事業前後の比較は,糖尿病の知識で良好維持群と改善群の 2 群ともに糖尿病予防•進行を防ぐ食事の理解,良好維持群で知識の正解数で有意に上がった。行動的側面では,良好維持群で間食または夜食をしない,油の調理方法への配慮,塩分の多い食品を控えるの 3 項目で,改善群で生活での健康への配慮,食べ過ぎない,油の調理方法への配慮,階段の使用,乗り物を使わず歩くの 5 項目で有意に改善した。測定データは,良好維持群で事業前後で有意差はなく,改善群で空腹時血糖値(前116.2±13.9,後103.8±15.1),HbA
1c(前6.4±0.6,後5.8±0.4),BMI(Body Mass Index)(前23.8±3.2,後22.3±3.0)が事業後に有意に改善した。
結論 参加者のほとんどで糖尿病の知識,食事や運動等の行動の改善,血糖コントロールの改善•維持が認められ,これは糖尿病予防自己管理支援事業への参加による効果が示された。改善群と良好維持群の血糖コントロール変化の違いは,血糖値が高めの改善群で行動の変化が SMBG に反映し,SMBG の変化が行動変容への動機付けとなり,さらなる行動の変容を導いた結果と推測された。
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