日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
資料
前期高齢者における BMI 別医療費と医療費高値群の特性 29,490人の大規模データを用いた検討
鈴木(齋藤) 智子安村 誠司岡村 智教坂田 清美日高 秀樹三浦 克之岡山 明
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 59 巻 7 号 p. 466-473

詳細
抄録

目的 前期高齢者への特定保健指導のあり方について検討するための基礎資料として,前期高齢者における BMI(body mass index)別の医療費,および医療費高値群の特性を明らかにすることを目的とした。
方法 全国12市町村の国民健康保険に加入する前期高齢者で,2008年度特定健診を受診した29,490人の健診データと,2007~2009年度の平均医療費データを用いた。分析項目は,生活習慣(喫煙,飲酒,運動,夕食後の間食,朝食,睡眠),生活習慣スコア,行動変容ステージ,動脈硬化性疾患の危険因子(高血圧,脂質異常症,糖尿病)の有無とした。医療費は,1 か月あたりの総医療費,外来総医療費および入院医療費を用いた。対象者を BMI (kg/m2)によりやせ群(18.5未満),適正体重群(18.5以上25未満),肥満群(25以上)の 3 群に分け,3 群間で前述の項目について比較検討した。医療費高値群の特性についての検討では,BMI 各群内で,総医療費の低値群と高値群の 2 群間で,生活習慣,危険因子の保有状況を比較した。分析方法は,連続変数には Kruskal-Wallis 検定,2 値変数にはカイ二乗検定を用いた。
結果 1)男女ともに,肥満群で危険因子ありの割合が有意に多く,やせ群では喫煙あり,生活習慣スコア 3 点未満,行動変容ステージが無関心期の割合が有意に多かった。2)男女ともに,やせ群から適正体重群,肥満群といくに従い総医療費,外来総医療費が有意に高くなっていた。3)男女とも,BMI 3 群いずれでも高血圧,糖尿病ありが医療費高値群で有意に多かった。
結論 医療費は肥満群で最も高額であったが,肥満群のみならず,やせ群,適正体重群においても,高血圧や糖尿病などの危険因子の保有が医療費高値群の特性として明らかになった。肥満者の危険因子保有割合が高いことや医療費が高額であることについては引き続き注目すべき課題であるが,前期高齢者においては,非肥満者に対しても高血圧や糖尿病などの危険因子の存在について留意した保健指導が求められることが示唆された。

著者関連情報
© 2012 日本公衆衛生学会
前の記事
feedback
Top