抄録
目的 平成20年度の地域保健推進事業「従来の疫学的手法で解明できない事例のための新たな調査手法の検討」報告書から,生鮮魚介類による原因不明の食中毒が全国的に発生していることが分かった。そのため平成21年度では,一年間に発生した原因不明の食中毒事件と有症苦情事例との総件数と月ごとの発生件数から,全国マップを作成することにより発生頻度や地域特性を,さらに各自治体におけるこの食中毒に対する考え方を,明らかにすることを目的とする。
方法 都道府県•政令市•中核市•保健所設置市•特別区の計136自治体に対して,生鮮魚介類を喫食後,初発症状までの平均潜伏時間が比較的短時間(概ね12時間以内)で,主に嘔吐(あるいは嘔気)•下痢•腹痛等の消化器症状を呈し,症状が一過性で,病因物質不明の食中毒事件および有症苦情事例の有無と発生月および件数を電子メールにて調査した。調査対象期間は,平成21年 1 月 1 日~平成21年12月31日までの一年間とした。回答期間は,平成22年 1 月 1 日~平成22年 2 月28日とした。
結果 都道府県•政令市•中核市•保健所設置市•特別区の計136自治体のうち99自治体(回収率72.8%)から回答を得た。該当事例が有りと回答した自治体は70で,無しと回答した自治体は29であった。平成21年 1 月 1 日~平成21年12月31日までの一年間の病因物質不明の食中毒事件および有症苦情事例の件数は,それぞれ57件,171件の計228件であった。2003年以降,年を追うごとに増加しており,2009年も全国的に発生していた。また,一年を通して発生しているが,1 月~3 月の 3 か月間の発生頻度は6.6%(15/228)で,9 月の37件を頂点とし,8 月~11月の 4 か月間では全体の53.9%(123/228)が発生していた。
結論 冬には発生が少なく,夏から秋にかけて発生が多いため,季節的な発生の偏りが考えられる。また,疫学的に原因施設が特定できても,原因食品や病因物質が特定できない原因不明の食中毒の場合,食中毒事件として取り扱うか,有症苦情事例として取り扱うか,各自治体がその判断に非常に苦慮していた。その結果,有症苦情事例数が,食中毒事件数の 3 倍になっていると考えられる。