日本公衆衛生雑誌
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原著
中高年者縦断調査を用いたソーシャル・キャピタル指標の作成と妥当性・信頼性の検討
相羽 美幸太刀川 弘和仲嶺 真高橋 晶野口 晴子高橋 秀人田宮 菜奈子
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2017 年 64 巻 7 号 p. 371-383

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抄録

目的 ソーシャル・キャピタル(SC)は,2つの下位要素(下位要素1:構造的フォーマル,構造的インフォーマル,認知的;下位要素2:結合型,橋渡し型)から構成される。本研究では,中高年者縦断調査のデータから,SCの指標を作成し,その妥当性と信頼性を検証した。

方法 中高年者縦断調査の調査票から,SCを測定している調査項目を抽出した。調査対象者は第1回調査(2005年)時点で50~59歳の男女を全国から層化無作為抽出した。第6回調査からSCの項目内容が変更されたため,本研究では第1回(n=34,240)と第2回(n=32,285)のデータをPhase1,第6回(n=26,220)と第7回(n=25,321)のデータをPhase2として抽出した。下位要素1の構造的フォーマル指標は,6種類の活動において「町内会・自治会」および「NPO・公益法人団体」の選択された数をカウントして算出した。構造的インフォーマル指標は,「家族や友人と」および「同僚と」の選択された数をカウントして算出した。認知的指標は,社会参加活動(Phase2では地域行事,高齢者支援,その他の社会参加活動)の満足度を用いた。下位要素2の結合型指標は,6種類の活動において「家族や友人と」,「同僚と」,「町内会・自治会」の選択された数をカウントして算出した。橋渡し型指標は,「NPO・公益法人団体」の選択された数をカウントして算出した。

結果 内容的妥当性として,専門家による合議の上,SCの構成要素に基づき,抽出された項目を下位要素に分類した。その結果,中高年者縦断調査の調査票は,各下位要素をすべて測定可能な項目で構成されていた。SCを独立変数,各健康指標を従属変数とした階層線形モデルを用いて収束的妥当性を検討した。その結果,個人レベルのすべてのSC指標が主観的健康感に有意な正の影響を及ぼしていた。一方,脳卒中については,集団レベルの認知的指標と構造的フォーマル指標が有意な抑制的影響を及ぼしていた。心臓病とがんについては,個人レベルと集団レベルのどちらも有意な影響がみられなかった。信頼性の検討のために,Phase1(第1回—第2回)とPhase2(第6回—第7回)においてマルチレベル相関分析を行った結果,相関係数は0.392-0.999であった。

結論 内容的妥当性の検証の結果,中高年縦断調査を用いて指標を作成することの妥当性が確認された。階層線形モデルにより収束的妥当性が部分的に確認され,マルチレベル相関分析により集団レベルにおいて十分な再検査信頼性が確認された。

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© 2017 日本公衆衛生学会
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