日本公衆衛生雑誌
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原著
インセンティブ付き健康づくり事業参加者のうち,誰がプログラムを継続できないか:報奨獲得への動機と継続率に関する実証研究
岡本 翔平駒村 康平田辺 解横山 典子塚尾 晶子千々木 祥子久野 譜也
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2017 年 64 巻 8 号 p. 412-421

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抄録

目的 近年,生活習慣改善のためにインセンティブを付与することが注目されているが,その効果に関するエビデンスは十分ではない。そこで,本研究では,参加者が報奨獲得に抱く動機が,プログラムの継続率に影響を与えるかを検証する。

方法 東北地方,中部地方,関東地方,近畿地方,中国地方の6つの自治体において40歳以上の住民を対象としたインセンティブ付き健康づくり事業(健幸ポイントプロジェクト)の参加者7,622人のうち,必要な調査項目に欠損のない4,291人を分析対象とした。健幸ポイントプロジェクトの継続は,日々の歩数の計測と指定の運動教室への参加を基に判断した。また,運動等の結果得られる報奨の現金性が高いかどうかの判定には,参加者がその報奨を選択した理由を用い,生存時間分析により,脱落のハザード比を推計した。さらに,健幸ポイントプロジェクト参加前の身体活動状況,喫煙・飲酒状況や食事への配慮等を調整した上でも解析を行い,どのような特性を持つ参加者が脱落しやすいかについても検討を行った。

結果 多変量解析の結果により,報奨の選択理由として「地域貢献」を選択した場合,「現金に近い・近くのお店で使用可能」を参照基準とした脱落のハザード比は,男性では1.63(95% CI:1.18-2.25),女性では1.40(95% CI:1.08-1.81)となった。さらに,脱落確率に対して,参加前の運動実施状況,喫煙状況,男性では就業状況,女性では身体の衰えの影響が認められた。

結論 本研究により,健康づくり事業参加者において,地域貢献のような内発的動機よりも現金性を実感できるような報奨が継続確率を高めることが示唆された。また,継続率をより高めるには,インセンティブ付与のみならず,もともとの身体活動状況等に応じて運動を継続できる工夫が必要であることも明らかになった。

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© 2017 日本公衆衛生学会
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