日本公衆衛生雑誌
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原著
都市部住民における塩味味覚閾値の規定要因に関する検討:神戸研究
若子 みな美佐田 みずき久保田 芳美西田 陽子久保 佐智美東山 綾平田 匠門田 文平田 あや宮嵜 潤二川原 瑞希桑原 和代杉山 大典宮松 直美宮本 恵宏岡村 智教
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2023 年 70 巻 5 号 p. 300-310

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抄録

目的 塩味味覚閾値の高値は高血圧との関連が指摘されているが,その規定要因は明らかではない。都市部地域住民集団で塩味味覚閾値の規定要因を明らかにするとともに,複数の規定要因が同時に存在した場合の塩味味覚閾値との関連を明らかにすることを目的とした。

方法 がんや循環器疾患の既往歴がなく,高血圧,糖尿病,脂質異常症の治療中ではない40~74歳の健康な都市部住民を対象としたコホート研究である神戸研究のベースライン調査参加者1,117人のうち,塩味味覚閾値検査を実施し,尿検査から推定一日食塩摂取量の結果が把握できる1,116人を対象者とした。塩味味覚閾値調査はソルセイブ®を用いて塩味味覚閾値0.6%を正常群,0.8%以上を高値群と定義した。塩味味覚閾値高値を目的変数,問診票から得られた生活状況,家族状況,教育歴,喫煙状況,飲酒状況,塩干物摂取状況,ストレス指標,推定一日食塩摂取量を説明変数として,二項ロジスティック回帰モデルにて検討した。さらに,説明変数を塩味味覚閾値に影響を与える要因,目的変数を塩味味覚閾値(正常/高値)として強制投入法を用いた多変量解析にて二項ロジスティック回帰分析を実施した。この分析では,推定一日食塩摂取量との多重共線性を考慮して,尿中ナトカリ比を除いて実施した。

結果 平均年齢は男性60.9±9.0歳,女性58.0±8.7歳であった。塩味味覚閾値の正常群は80.9%(903人)(男性73.6%(251人),女性84.1%(652人)),高値群は19.1%(213人)(男性26.3%(90人),女性15.9%(123人))であった。多変量解析の結果,全対象者において現在喫煙習慣がある群は喫煙習慣が無い群と比較し,塩味味覚閾値高値となるオッズ比(95%信頼区間)が2.51(1.33–4.74)と有意な関連が認められた。また,推定一日食塩摂取量上位25%群では下位75%群と比較してオッズ比(95%信頼区間)が1.45(1.03–2.03)と塩味味覚閾値高値との有意な関連を認めた。男女別の解析では,男女ともに現在喫煙習慣と塩味味覚閾値高値との関連を認め,推定一日食塩摂取量は男性のみ関連を認めた。

結論 健康な都市住民において,喫煙習慣と推定一日食塩摂取量の多さが塩味味覚閾値高値と関連していた。

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