2026 年 73 巻 1 号 p. 46-53
目的 日本国内におけるレジオネラ症の集団発生事例では,感染源の大部分が浴槽水である。本報告では,公衆浴場や宿泊施設にある浴槽の監視に役立つ知見を得るため,衛生管理状況とレジオネラ属菌の検出との関連,アデノシン三リン酸(以下,ATP)を事前検査として使用する手法の課題を検討した。
方法 2017年度から2024年度に,富山県高岡市内の公衆浴場や宿泊施設にある浴槽を対象に監視を実施した。監視では,聞き取り調査と簡易水質検査を行った。浴槽水のATPが80 RLU(Relative Light Unit)以上あった場合はレジオネラ属菌の検査を行った。レジオネラ属菌の検査を行った浴槽を対象とし,6つの衛生管理項目とレジオネラ属菌の検出との関連を分析した。また,ATPとレジオネラ属菌の検出との関連を分析した。
活動内容 分析対象とした浴槽は94件で,そのうち29件でレジオネラ属菌が検出された。採水時の遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒については,レジオネラ属菌が検出された浴槽と検出されなかった浴槽で,基準の適合率に20.7~23.2%の差があった。採水時の遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒の両方が基準に適合していなかった場合の検出率は85.7%(6/7件)と最も高かった。循環式で水道水を使用している浴槽での検出率は85.7%(6/7件)であった。しかし,同じ循環式でも地下水を使用している浴槽での検出率は25.0%(19/76件)であった。非循環式で地下水を使用している浴槽での検出率は36.4%(4/11件)であった。
結論 遊離残留塩素濃度の管理だけではレジオネラ属菌の増殖を防ぐことは難しく,集毛器の洗浄・消毒は1週間に1回以下になると,レジオネラ属菌の増殖リスクが高まる恐れがある。とくに遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒の両方が基準に適合していない場合,早急な改善が必要と考えられる。ATPを事前検査として使用するには,地下水を使用している浴槽での検出率を向上させる方法を検討する必要がある。