抄録
燃料電池は高効率,低環境負荷のエネルギー変換システムであり,これまで多くの研究·開発が行われてきた。その中で,作動温度200~600℃の中温作動燃料電池は高温形や低温形の利点を併せ持つとして期待されている。しかし,中温域で高いイオン伝導性,熱安定性を示す電解質材料が開発されていないという理由から,この燃料電池の研究例はほとんど報告されていない。本研究では固体酸とピロリン酸塩からなる新規な複合体電解質を作製し,中温域における電気化学的特性,結晶構造,熱挙動を検討した。CsH2PO4/SiP2O7複合体では,熱処理中にCsH2PO4とSiP2O7が界面で反応し,CsH5(PO4)2相の生成が確認された。この複合体はCsH2PO4単味と異なる導電率の温度依存性を示し,266℃で44 mS·cm−1という高い導電率を有した。これはCsH5(PO4)2がプロトン伝導相として働いた結果である。また,Cs塩の代わりにK塩やRb塩をプロトン伝導相に使用したMH2PO4/SiP2O7複合体(M=K,Rb)においても,同様な現象が観察された。CsH2PO4/SiP2O7複合体を電解質とした燃料電池は200℃において良好な性能を示し,この電解質材料が中温作動燃料電池へ使用可能であることが実証された。さらに,マトリックスによる複合効果を明らかにするために,CsH5(PO4)2を伝導相,SiP2O7およびSiO2をマトリックスとした複合体において,導電率,熱挙動,両成分間のぬれ性について検討を行った。熱分析の結果,複合体中のCsH5(PO4)2の融解および脱水縮合はマトリックスに強く依存した。CsH5(PO4)2/SiP2O7複合体は最も高い導電率を示し,CsH5(PO4)2とSiP2O7の接触角は非常に小さいことが確認された。これらのマトリックス依存性はCsH5(PO4)2とマトリックスの界面相互作用の違いに起因しており,SiP2O7がCsH5(PO4)2と良好な適合性を示すことを明らかとした。